65歳以上対象のオーディションを勝ち抜いた高齢者たちが出演する演劇「終点まさゆめ」が21、22の両日、県文化会館ホール(三重県津市)で上演される。県内からは、演劇経験のない名張市の山田浩司さん(79)が出演。地元デビューを果たす。山田さんは「シニアの人が頑張っている姿を見てほしい」と張り切っている。
高齢化社会や介護をテーマにした演劇やアートに取り組んでいる県文化会館が岡山芸術創造劇場ハレノワ(岡山市)、彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)とタッグを組み、高齢者による演劇を企画。作品は岸田國士戯曲賞の受賞経験もある劇作家の松井周さんが書き下ろした。
オーディションはこの3会場で実施。プロの俳優とともに出演する人を選考した。県内のオーディション参加者10人、合格した6人(各会場2人)の中で、ずぶの素人は山田さんだけ。「偶然チラシを見て65歳以上という文字が目に留まったから応募した」という山田さんは「演劇サークルが高齢者施設とかを回るのかな」といった程度の軽い気持ちだったという。
オーディションでは「どうせあかんやろ」と開き直り、与えられた酒屋の役を演じた。たまたま、定年後に酒造会社でアルバイトをした経験から酒の知識があり、手応えはそれなりにあった。だが、いざ選ばれると「素直にうれしかったけど、なんで俺なんや」と思い、「演技経験ないし、どないしたらいいんや」と弱気になった。
そこで審査員を務めた松井さんに理由を尋ねると「自然体で存在感が飛び抜けていた」と絶賛された。家族も「ありのままでいいやん」と後押ししてくれ、けいこに打ち込んだ。
作品は、夢をかなえてくれる惑星「まさゆめ」で最後の日々を過ごそうと宇宙船に乗り込んだ高齢者7人だが、トラブルで1人を下船させねばたどり着けないことが分かり――というストーリー。
2週間前にあった岡山での初舞台では「緊張で頭が真っ白になったけど、お客さんが笑ってくれたことがうれしかった」という山田さん。アドリブも求められる作品を堂々と演じる姿に、松井さんは「普通の顔をしてとんでもないことを言う。年を重ねた経験に裏打ちされた言語センスの持ち主」と太鼓判を押す。
三重公演にあたり松井さんは「一回限りのイベントみたいに毎回違う展開になる。今までにない作品」と話し、来場を呼び掛けている。
公演は21、22両日とも午後2時開演。料金は一般3000円、22歳以下は1500円。問い合わせは県文化会館(059・233・1122)へ。【下村恵美】
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