「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さんが急死した事件で、殺人などの罪に問われた元妻の須藤早貴被告の初公判が開かれた和歌山地裁の法廷=和歌山市で2024年9月12日午前10時35分(代表撮影)

 和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さん(当時77歳)を急性覚醒剤中毒で死なせたとして、殺人などの罪に問われた元妻、須藤早貴被告(28)の裁判員裁判の判決で、和歌山地裁(福島恵子裁判長)は12日、無罪(求刑・無期懲役)を言い渡した。

 「被告は無罪」

 裁判長が主文を言い渡した瞬間、被告は動じることなく落ち着いた様子だった。この日の法廷には黒いスーツに白いマスク姿で出廷。判決言い渡しの最中は証言台の前に座り、前を向いて聞いていた。

野崎幸助さん=知人提供

 9月から始まった公判の終盤、被告は3日間に及んだ被告人質問に臨んだ。金銭への執着や野崎さんへの恨み節を語り、奔放さが浮き彫りになった。

 「どちらかというと『無』ですかね」。被告は野崎さんが死亡した際の第一発見者で、その時の心境を一言で表現した。「遺産がもらえるまで時間がかかるので面倒」とも言い放った。

 結婚した際、野崎さんから毎月100万円を受け取る約束だったことも明らかにした。「ラッキー。うまく付き合っていこうと思った」と振り返り、「遺産目当てだとは誰にも隠していない」と語った。

 一方、覚醒剤を巡っては捜査段階で明かしていなかった供述が飛び出した。「社長から『買ってきてくれませんか』と言われた」と述べ、20万円を手渡されたと説明。「冗談だと思った。買ったことないから放置した」としたが、野崎さんから促されて密売サイトで購入したと説明した。

 野崎さんが死亡した経緯についても発言。自らの関与を否定したうえで、「(野崎さんが)死にたいと言っていたから自殺の可能性がある」と言えば、「(覚醒剤の)量を間違えたんじゃないか」とも語り、持論を展開していた。

 「目の前に野崎さんが今いたら何と言いますか」と質問された被告。事件後に「殺人犯扱いをされた」と繰り返したうえで、「もうちょっと死に方を考えてほしかった」と切り捨てた。【藤木俊治】

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