兵庫県の斎藤元彦知事(47)がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、県は11日、元県西播磨県民局長(7月に死亡)が県の公益通報窓口に通報した内容に対する調査結果を公表した。パワハラ疑惑については、斎藤氏から強く叱責されたと認識する職員は確認できたが、「パワハラがあったとの確証までは得られなかった」と認定。贈答品の受け取り問題と合わせて是正措置を講じるよう求め、改善策をまとめた。
元局長は3月、斎藤氏のパワハラなど県政にまつわる「七つの疑惑」を報道機関などに文書で送付。4月には、ほぼ同じ内容を県の公益通報窓口に通報した。今回公表されたのは、4月の通報に基づいて県公益通報委員会の弁護士らが調査・審議した結果だ。
斎藤氏は3月の告発内容について、「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」などとして、公益通報には当たらないと判断。5月には、告発は「核心的な部分が事実でない」などの理由から、元局長を停職3カ月の懲戒処分にした。
しかし今回、県がほぼ同内容の告発の一部に対して是正措置を求めたことで、一定の「公益性」が認められる形となった。県の担当課は「(元局長の)告発は公益通報に当たる」と説明、内容の真偽については「真実かどうか確認できたものと、できなかったものがあった」とした。
調査結果と改善策は11日の記者会見で公表された。会見で従来の見解と矛盾しないか問われた斎藤氏は、改めて「3月の文書は今も真実相当性がない(ので公益通報には当たらない)と思っている。当時の対応や(元局長の)処分は適切だった」と強調した。
調査結果は、斎藤氏が「業務上の必要性から、職員に強い口調で指導することがあったと認識している」とした。一方、日時や場所が特定された事案で、知事に強く叱責されたと感じた一部の職員も「パワハラを受けた」とは認識していなかったという。周囲の職員も叱責は聞いていたが具体的な言動を記憶しておらず、「パワハラと認められる事案があったとの確証までは得られなかった」とした。県は改善策として、知事ら幹部職員を対象にハラスメント防止を含む特別研修を実施する。
贈答品の受け取りについては、慣例や個人の判断に委ねられる余地があり、「知事の意図しない受領につながったケースが確認された」などと認めた。是正を求められた県は、11日付で規則改正や知事も対象にしたガイドラインを策定。ガイドラインでは、補助金の交付対象者など県の利害関係者からは原則受け取らず、無償で物品を借り入れる場合は貸付書を受け取るとした。
県議会調査特別委員会(百条委)では、斎藤氏が視察先などでカニやカキを受け取っていたことが明らかになっている。県の担当課は「その場その場での判断だが、原則はいただかない」と説明した。
16日には、職員からの公益通報を受け付ける外部窓口も設置する。
県への公益通報の調査結果は原則非公表という。だが、県は「元局長の公益通報が知られており、県民の関心が高い」として概要を公表することにした。百条委では担当の県幹部が「7月に公表を検討したが、時期として適切でないと判断した」と述べていた。
告発内容については百条委のほか、県が設置した第三者委員会でも調査が進む。百条委は11日、斎藤氏に25日の証人尋問への出頭を要請することを決め、斎藤氏も出席する意向を明らかにした。【中尾卓英、山田麻未、山田豊、栗田亨】
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