日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授賞式を10日に控え、核廃絶の分野で受賞経験のある科学者の国際組織「パグウォッシュ会議」の会長に、日本被団協受賞の意義を聞いた。
1995年にノーベル平和賞を受賞したパグウォッシュ会議のフセイン・シャハリスタニ会長(82)は、日本被団協の活動の意義を「原爆の大量殺りくの恐ろしさを教えてくれた。広島と長崎に被害をもたらした人類の過ちは、二度と繰り返してはならない」と話した。
パグウォッシュ会議は、核兵器による人類絶滅の恐れに警鐘を鳴らした「ラッセル・アインシュタイン宣言」(55年)を受けて、東西冷戦下の57年に世界の科学者22人がカナダの漁村パグウォッシュに集い初会議を開いた。科学的根拠に基づいた核廃絶への提言を国際社会に発信し続けてきた。
「『人間性を忘れない』が会議のモットー」と語るシャハリスタニ会長はイラク出身の核科学者。旧フセイン政権下で核開発への協力を拒否し、79年から11年間、アブグレイブ刑務所に収監され、脱獄した経験を持つ。「核開発を拒んだ決断を後悔したことは一度もなく、支払った代償はその価値があった」と言い切る。2003年のフセイン政権崩壊後は一時首相候補になり、石油相や高等教育・科学研究相などを歴任、今年5月にパグウォッシュ会議会長に就任した。
現在の世界情勢について、核戦争のリスクがかつてなく高まっていると指摘し、「核戦争が起きれば壊滅的な被害をもたらしエスカレートする恐れがあり、平和的な解決方法を真剣に探るべきだ」と力を込めた。
そうした状況での日本被団協への平和賞授与は「世界がこの組織の重要性を再認識するとともに、核兵器の危険性を考えることにつながる」と話した。過去にノーベル平和賞を受賞した団体として「目標を共有する団体の仲間入りを歓迎し、核廃絶を進めるため共に歩みたい」と祝意を表した。平和賞を受賞した他団体や、核廃絶に向けて取り組むさまざまな機関と協力する用意があるとも強調した。
同会議は、95年と05年に広島、15年に長崎で世界大会を開き、来年11月に広島市で世界大会を予定している。原爆投下80年の節目に被爆地で開催する意義を「世界中から集まる参加者が、核廃絶を目指す人々の決意に敬意を表するもので特に重要視している」と説明する。シャハリスタニ会長は過去に広島と長崎で開催された会議に出席したことはないが「来年の広島訪問を楽しみにしている。被爆者の証言に耳を傾け、そのメッセージを受け止めたい」と語った。【高木香奈】
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