京都市右京区で行われた工場の解体工事に伴い、周辺の住宅地に飛散した粉じんからアスベスト(石綿)が検出されていたことが業者側への取材で分かった。京都市は11月、石綿の飛散防止に必要な対策を怠ったとして、解体に関わった住宅建設会社を行政指導した。
石綿を含む建材は作業で飛散しやすい順にレベル1~3の3段階に区分され、工場に使われていた建材はスレートなど比較的石綿が飛散しにくいとされるレベル3に当たる。レベル3の解体工事は大気汚染防止法改正(2021年施行)に伴い新たに規制対象となり、対象工事が大幅に増えるため実効性の確保が課題になっていた。
市などによると、行政指導を受けたのは同市南区の住宅建設会社。11月、店舗兼工場の2階建て建物(延べ約1700平方メートル)を飛散を防ぐ措置を十分徹底させずに解体したとされる。
解体工事は、店舗兼工場の跡地にマンションを建てるため大阪市内の不動産会社が住宅建設会社に依頼。住宅建設会社から頼まれた京都市内の解体業者が作業を行っていた。
現場はマンションや民家が建ち並ぶ住宅街。現場の隣にあるマンションの住民によると、11月ごろからベランダなどで粉じんが確認されるようになった。
マンションのベランダなど38カ所から業者が粉じんを採取し、検査した結果、このうち20カ所で石綿が確認された。現在、解体作業は中断している。
大気汚染防止法は、レベル3の建材の解体作業では、石綿が飛散しないよう水をまくなどの「湿潤化」を行うよう定めている。住民が解体作業を撮影した動画では、石綿含有とみなされた建材が使われている屋根で、作業員が電動のこぎりで建材を切断して粉じんが上がったり、建材を数メートル下の地面に放り投げたりする様子が確認できる。
京都上労働基準監督署は11月、安全対策を怠ったなどとして住宅建設会社に対し、労働安全衛生法に基づき是正勧告した。
住宅建設会社の代表は毎日新聞の取材に「市と相談して適切に対応する」としている。
解体業者の代理人は「レベル3(の建材)はあまり飛散しないという認識の下、作業していた。高い場所で湿潤化をすると足を滑らせる怖さが現場にあり、下に落としてから水をまいた」とコメントした。
環境省はレベル3の建材を扱う解体工事は年間で最大32万件に上ると推計している。市民団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京)の永倉冬史事務局長は「レベル3の解体の危険性が十分認識されていない可能性があり、不適切な事例は氷山の一角ではないか。行政は飛散防止対策を業者に徹底する必要がある」と指摘している。【水谷怜央那】
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