警察庁、国家公安委員会などが入る中央合同庁舎第2号館=東京・霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 首都圏を中心に「闇バイト」が絡んだ強盗が相次いでいることを受け、捜査員が身分を偽って闇バイトに応募して、犯罪グループに接触する新たな捜査手法の導入を警察庁が検討していることが関係者への取材で判明した。「仮装身分捜査」と呼ばれる手法で、捜査員が身分を積極的に偽る捜査手法はこれまで実施していなかった。事件の発生の抑止につなげたい考え。

 ネット交流サービス(SNS)で募集されている闇バイトでは、応募すると指示役から秘匿性の高いアプリに誘導され、運転免許証といった身分証明書の画像など個人情報を送るよう求められる。

 関係者によると、仮装身分捜査では、架空の人物の運転免許証などを作製したうえで、捜査員がSNSに投稿された闇バイトに応募。指示役から求められれば偽の免許証の画像を送る。

 そして、指示役から指定された集合場所に行き、他の応募者と接触。強盗などの犯罪が起きる前に摘発することを想定している。

 偽の身分証明書を作った場合、通常は公文書偽造などの罪に問われるが、刑法は「法令または正当な業務による行為は罰しない」と規定している。警察庁は違法性は阻却されると判断し、関係省庁とも協議を進める。運用指針を策定して、来年にも実施したい考えで、闇バイトが絡む事件以外には使わないという。

「仮装身分捜査」の流れとイメージ

 国内ではこれまで、捜査員が身分を隠す「おとり捜査」が、薬物捜査などで限定的に実施されてきた。

 2010~12年に国家公安委員長が主催した捜査手法や取り調べの高度化を検討する有識者の研究会で、仮装身分捜査も議論された。公的な身分証明制度に混乱をもたらすおそれがあるとの意見や、組織性が高い犯罪の真相解明に資するなどの指摘があった。

 海外では仮装身分捜査を導入している国もある。【山崎征克】

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