下請け業者に金型を無償で保管するよう強要したとして、公正取引委員会は5日、電気通信設備大手の「電気興業」(東京都千代田区)の下請け法違反(不当な経済上の利益の提供要請)を認定し、再発防止を勧告した。電気興業は金型を回収し、保管にかかった費用を算出して支払う方針を示しているという。
電気興業は携帯電話の基地局や公共無線などに使用されるアンテナを製造。基地局のアンテナでは国内で40%のシェア(市場占有率)を占める。
公取委によると、電気興業は遅くとも2021年9月以降、下請け業者20社に対し、自社で保有する金型や治具計339点を無償で保管させた。長期間使用する予定のないものや10年に1度しか使わないものも多く、大半は保管期間が5年以上に及び、30年近いケースもあった。
中には3メートル四方の板状の金型も含まれており、保管スペースを確保するために倉庫を借りた業者もいた。アンテナは特注品が多かったり、破損時に緊急製造したりするため、電気興業も処分に踏み切れなかったとみられる。
電気興業は保管方法について、最終発注から5年間は下請け業者の責任とし、それ以降は協議するとの覚書を交わしていたという。公取委の担当者は「1年以上使用しない状態で保管させること自体が問題であり、協議を行った形跡もない。業界構造のしわ寄せが下請け業者にいった形だ」と指摘した。【渡辺暢】
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