発電機の騒音の深刻さを語る村上正宏さん。後方の緑色の建屋にはXバンドレーダーが入っている=京丹後市丹後町袖志で2024年11月28日正午、塩田敏夫撮影

 弾道ミサイルを探知・追尾するXバンドレーダーを配備した米軍経ケ岬通信所が2014年12月に京都府京丹後市丹後町で稼働を始めて26日で10年になる。基地“受け入れ”の際、中山泰市長は「住民の安全と安心の確保が大前提」と繰り返し表明したが、現実はどうなってきたのか。近畿で唯一の米軍基地の町の10年を検証する。【塩田敏夫】

 1000キロ先の野球ボールの動きさえとらえるとされるXバンドレーダー。近畿最北端の町から緊張感を高める北朝鮮や中国の動向を監視しているとされるが、軍事機密のベールに包まれている。

経ケ岬通信所

 レーダーを格納する緑色の建屋から東に1キロ足らずの袖志区にある萬福寺。住職の村上正宏さん(78)は怒りを抑えられない表情で語り出した。「基地を作る前、防衛(省)の役人は何度も寺にやってきて『絶対、迷惑をかけない』と繰り返した。それはうそっぱちだった。今、米軍基地の被害を受け続けている沖縄の人たちの気持ちがわかる」。

 村上さんは、防衛省近畿中部防衛局長あてに出した8月29日付の申し入れ書を示した。この夏にレーダーが原因の騒音で夜も眠れず、体調不良になったことが記され、具体的な対策や補償をすることを文書で回答するよう求めている。

 基地周辺住民はレーダー稼働と同時に始まった騒音に苦しめられてきた。移動式のレーダーを稼働させる発電機が「ゴォー、ゴォー」と昼夜を問わず大きな音を出し続けたからだ。住民たちは「話が違う。夜も眠れず生活できない」と声を上げ、袖志区住民の一人は「里帰り出産した娘は母乳が出なくなり、帰っていった。何とかしてほしい」と訴えた。

 米軍や防衛省は発電機に防音マフラーを取り付けるなどさまざまな対策を取ったが、大きな効果はなく時間だけが過ぎていった。約4年後の18年9月、ようやく「抜本的対策」として送電線からの商用電力が導入された。その際、米軍は「緊急時以外、発電機のメンテナンスは可能な限り平日の日中に行い、夜間や早朝、土日はやらない」と約束した。

 しかし、その後も事前の連絡なしに昼夜を問わない発電機の連続稼働が続き、そのたびに住民団体や市が抗議する事態が繰り返されてきた。稼働についての事前や事後の連絡が防衛省を通じてくるようになったのは最近のことだ。ただ、いつ稼働しいつ終了するのかといった具体的情報は、市長が要求しても、今も入ってこない。

 市によると、18年の商用電力導入後の夜間、早朝、土日の稼働は計27回に上る。村上さんは「この夏、夜間の騒音で寝不足となり、倒れるかと思った」と語る。夜間の騒音で眠れなかったのは8月6、7、10、11日の4日間と記録しているが、10、11日については防衛省は米軍に確認した結果、稼働はなかったとしている。

 これに対し、村上さんは「米軍は夜間に発電機を動かしても、5回に1回くらいしか防衛(省)に連絡していないのではないか。なぜならこれまでもずっと何の連絡無しに発電機を動かしてきたのだから」と反論する。

 村上さんによると、騒音対策の申し入れに対し防衛省からの回答はない。担当者が直接寺にやってきたことがあるが、「すいません」と謝罪の言葉を繰り返すだけで、具体的な話はないという。

 村上さんは「防衛(省)がただ謝るだけでは何の解決にもならない。米軍のやりたい放題で、沖縄と一緒だ。日本も少しは主権を持つ国になってほしい。文書で返事をよこさない限り、米軍に貸している寺の土地の延長契約の判子はつけない」と語った。

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