絵本「ふしぎな光のしずく~けんたとの約束」を完成させた田村孝行さん(左)と弘美さん夫妻=3月、宮城県松島町(大渡美咲撮影)

東日本大震災の津波で長男の田村健太さん=当時(25)=を亡くした父の孝行さん(63)と母の弘美さん(61)が絵本「ふしぎな光のしずく~けんたとの約束~」を刊行した。2人は「絵本を通じて命の大切さを伝えたい」と話している。

健太さんは平成23年3月11日の震災当時、七十七銀行女川支店(宮城県女川町)に勤務。支店内にいた行員らは支店長の指示で2階建ての屋上に避難したが、津波に襲われ、健太さんを含む4人が死亡し、現在も8人が行方不明となっている。

田村さん夫妻は、二度と同じ悲劇を繰り返さないためにも、震災の教訓や健太さんが生きた証しを将来に伝えていきたいと、支援者の協力を得ながら5年がかりで絵本を完成させた。

絵本の前半では、健太さんの誕生や成長、就職するまでの幸せな日常が描かれるが、東日本大震災で一変する。後半には、健太さんを失った悲しみから前を向こうとする2人の姿が描かれている。地震の激しい揺れや鳴り響く防災無線、巨大な黒い波が建物の屋上に避難した人たちをのみこんでいく様子は、津波の恐ろしさが伝わるように描いたという。

弘美さんは「息子の生きた証しを残すことができた。命の大切さを伝え続けていきたい」と話し、孝行さんは「命を守るには過去の記録が未来を照らすと思っています。絵本ができてよかった」と話した。

絵本は千冊制作され、うち400冊は全国の小中学校などに寄贈される。書店やインターネットで購入できる。問い合わせは金港堂出版部(022・397・7682)まで。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。