名古屋市内の公立学校の校長らで作る任意団体「名古屋市教育会」が各校の文化活動や教職員研修への支援を名目に、保護者から年間予算の8割分の会費を集めていることについて、前名古屋市長の河村たかし氏(現衆院議員)は「全容を明らかにしたい。市教育会は説明責任を果たすべきだ」と追及してきた。だが、河村氏が市長を途中で辞めたこともあり、調査が事実上棚上げ状態となっている。
名古屋市の公立幼稚園、小中高校では子どもの保護者に1口100円の会費を募り、クラス担任が学校で徴収している。2023年度は会の収入の約8割を保護者の会費で賄う一方、支出の3分の1を市教育会事務局員の給与に充てていた。事務局員は元校長2人を含む計3人で、保護者や教員の一部からは「教育会の事業は本来は教育委員会が予算化すべきもの」「教育会は校長の天下り組織だ」といった批判が出ている。
9月の定例市長記者会見で、河村氏は「学校という閉鎖空間で(市教育会が子どもから)集金することはいかん」と批判。関係者によると、河村氏は「教育会自ら記者会見などを開いて説明責任を果たすべきだ」と市教委に伝えた。だが、市教育会側は「市教委から説明を求める連絡は(10月末時点で)来ていない」と話す。
市教育会は1881年に創設された名古屋区教育会が前身。かつては全国組織の「大日本教育会」に属していたが、1946年に脱退して以降、市独自の教育助成団体として活動している。市教育会の担当者は「我々はこれまでこのやり方でやってきている。今後もやり方を変えるつもりはない」と話し、記者会見の予定もないという。
市教委は各学校の教育課程や教科書の取り扱いなどを所管しているが、任意団体の教育会は管轄外。市教委の担当者は「教育会は関連団体でもないので活動は把握していない」と話す。
名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は、市教委の中には学校で集金を許可してきた元校長も在籍していると指摘。そのうえで「市教委と市教育会の間で一種の利権構造があるのではないか。市教育会の問題は市教委ではなく、市長部局でしっかり対応すべきだ」と話す。【真貝恒平】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。