国連の中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)は1日、京都市北区の立命館大で講演し、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授与決定について「国際社会が核リスクと隣り合わせにある中、核兵器は絶対に使用してはならないと再び世界に発信するために大きな意義があった。軍拡から軍縮に軌道修正する契機にしなければいけない」と訴えた。
中満氏はこの日、立命館大の教学理念である「平和と民主主義」を体現しているとして名誉博士号を贈られた。講演は「平和で公正な未来へ 私たちにできること」と題し、会場とオンライン聴講の学生ら約400人に向けて行われた。
中満氏はノルウェー・オスロで12月10日に開かれる授賞式に、被団協代表団の一員として出席する予定で「被団協の方々に心からおめでとうございますとお伝えできることは非常にうれしい」と述べた。
地政学的な緊張が続く中、「人類が一丸となり、紛争より平和、分断より協力と対話、恐怖よりも希望を選択しなければならない歴史上の岐路に立っている」と指摘。「紛争が人間やコミュニティーに壊滅的な影響力を与える一方、個人の行動が結集し大きな変化をもたらすことも目撃してきた。これまでの経験からも、各国が協力すれば、(国連の創設目的で憲章に記されている)『戦争の惨害から将来の世代を救う』ことは可能だと信じている」と述べた。
また、今日の国際的課題に対応するために若者のリーダーシップは欠かせないと強調し「身の回りにあるさまざまな不公正さの解決に取り組むことが、平和に貢献する重要な部分を占めている」と話した。若者が力を発揮するための助言として、新しい技術を平和のために使う方法を考える▽正しいことは何か考えて勇気をもって行動する▽自らの思想や関心を超えて他の人とつながる道を探す--ことを挙げた。
講演会後は立命館大の学生や付属高校の生徒らと交流した。参加者から「困難にぶつかったときどのように乗り越えたか」と質問されると、中満氏は「同じミッションを共有している人たちと働き、できるだけの努力をして娘たちの世代に引き渡したいという個人的な思いが原動力になっている」と答えた。終了後、中満氏は取材に「こういうところから(国連や国際的課題の解決に)興味を持ってもらい、勉強して貢献したいという人が出てくれたらうれしい」と話した。【高木香奈】
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