国土交通省は1日、上下水道施設の耐震化状況に関する緊急点検の結果を公表した。2024年3月末時点で、災害拠点病院や避難所などの「重要施設」のうち、接続する水道と下水道の管路などがいずれも耐震化されていたケースは約15%にとどまった。浄水施設や下水処理場なども含め、総じて十分な耐震化が進んでいない現状が浮き彫りとなった。
1月1日に発生した能登半島地震では、最大14万戸が断水するなど上下水道施設に甚大な被害が発生した。特に浄水場や配水池、下水処理場に直結する管路が被災。耐震化が未実施だった地域では断水が広がった。避難所や防災拠点に接続する管路が使えなくなり、復旧の遅れにもつながった。
これを受けて政府は、災害時でも上下水道システムの機能を維持するために重要な施設について、全国規模で耐震化の状況を緊急点検していた。
国交省によると、全国の災害拠点病院や避難所、防災拠点などの「重要施設」2万4974カ所のうち、水道、下水道、汚水をくみ上げるポンプ場のいずれも耐震化されていたのは3649カ所(約15%)だった。都道府県別では、最も耐震化率が高かったのは東京都の52%で、最も低い香川県は0%だった。
被災地では飲み水のほか、トイレや風呂、洗濯などに使う生活用水が必需品となる。そのため上下水道ともに機能を維持することが必須だ。国交省は「普段通り水が使えるようにするためには、各施設が一気通貫で耐震化されていることが重要。平時から水道と下水道の両方の機能を確保するため、計画的な耐震化を進める必要がある」と指摘している。
今回の点検結果によると、上下水道システムの基幹となる「急所施設」の耐震化率も低水準だった。
水道施設では、最も耐震化率が高かったのは配水池で約67%。次いで送水管が約47%、取水施設が約46%、浄水施設が約43%で続いた。給水人口の規模別にみると、いずれの施設も人口規模が小さい地域の水道事業者ほど耐震化率が低い傾向が見られた。
また下水道施設では、耐震化率は下水道管路が約72%、下水処理場は約48%にとどまった。下水処理場は人口規模が大きい市町村ほど耐震化率が低い傾向が見られた。
今回点検の対象となった水道管は約10万キロで、全国総延長(約80万キロ)の12・5%。下水道管は約4万キロで、総延長(約50万キロ)の8%を占める。全国の水道事業者ら約3800事業者と下水道管理者約1500事業者に聞き取り調査をした。
耐震化が進まない背景には、自治体などの財政状況の厳しさや、耐震工事をする際の代替施設の確保の難しさなどがあるという。政府は今回の点検結果を受け、全国の事業者に対し、来年1月までに「上下水道耐震化計画」を策定するよう要請。技術的支援のほか、財政支援についても来年度予算の概算要求に盛り込んでいる。【佐久間一輝】
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