公正取引委員会の大胡勝審査局長(左手前)から処分を伝えられる、(右奥から)あいおいニッセイ同和損害保険の新納啓介社長、損害保険ジャパンの石川耕治社長、三井住友海上火災保険の船曳真一郎社長、東京海上日動火災保険の城田宏明社長、共立の石井哲社長=東京都千代田区で2024年10月31日午前10時1分、渡辺暢撮影

 損害保険大手4社が企業・団体向けの保険契約でカルテルを結んでいた問題で、公正取引委員会は31日、三井住友海上火災保険▽損害保険ジャパン▽あいおいニッセイ同和損害保険▽東京海上日動火災保険――の独占禁止法違反(不当な取引制限)を9件認定し、課徴金計20億7164万円の納付と、再発防止を求める排除措置を命じた。公取委は各社の組織的な関与は確認されていないとする一方、同時多発的に違反行為が行われていたことから、業界内に「不正がまん延している」と指摘した。

 公取委によると、認定した違反行為9件はカルテルが7件、談合が2件。不正な保険契約の総額は540億円規模に上った。

損保大手カルテルと談合を巡る処分状況

 カルテルはいずれも複数社が共同して契約を結ぶ「共同保険」を悪用。4社は2019年以降、エネルギーや交通インフラなどの事業者と契約を更改する際、事前に見積額を調整し、保険料の引き上げを図った。

損保大手カルテル発覚後の経緯

 共同保険は自然災害などに伴う多額の保険金支払いリスクを分散する仕組みで、損保側は幹事会社が仕切り役となり、複数社があらかじめ決められた引き受け割合(シェア)に応じて保険金を分担する。損保間の相互連絡が不可欠なため、カルテルの温床になった。

「共同保険」のイメージ

 カルテルは損保各社の担当者間で引き継がれ、違法性を疑っても「自分の担当時にやめるわけにいかない」といった意識が働いていた。4社とも上層部からの指示などは確認されなかったものの、カルテルで保険料引き上げに成功したという趣旨の社内報告がなされたケースは複数あった。

 一方、公取委は同日、一部カルテルで損保間を仲介したとして、保険代理店「共立」に対しても排除措置命令を出した。共立は共同保険の幹事会社から代理店に指名されて事務手続きなどを担い、手数料収入を得ていた。また、2件の談合は三井住友海上火災と損保ジャパン、東京海上日動の3社によるもので、東京都と警視庁がそれぞれ発注した保険の入札で事前に受注する社を決めたという。

 損保大手4社を巡っては金融庁が23年12月、保険業法に基づき業務改善命令を出し、保険契約計576件で不適切な行為があったと指摘。公取委は今回、うち9件について独禁法違反を認定した。【渡辺暢】

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