福島第一原子力発電所2号機での燃料デブリの試験的取り出し作業が10月28日に再開された。
燃料デブリの取り出しは廃炉の最難関とされ、試験的取り出しも当初2021年中に実施される予定だったが、ロボットの制作遅れや変更などで延期されていた。
取り出しの準備が整い、2024年8月22日に着手されるはずだったが、作業工程のミスで再び延期。9月10日に再開されたものの、カメラの不具合で中断し、約1か月半が経過している。
【なぜ燃料デブリの取り出しが廃炉に重要なのか?】
福島第一原発の1号機から3号機までには、約880トンのデブリがあると推計されている。「燃料デブリ」は2011年の事故で溶け落ちた核燃料が、金属やコンクリートなどの構造物を巻き込んで冷え固まったもので、高い放射線の発信源となっているもの。
燃料デブリに触れた水が「汚染水」となり、ここから大部分の放射性物質を取り除いたうえで海水で薄めて海に放出する「処理水の海洋放出」は今も継続中。また、高い放射線が放出される限り近隣住民の帰還環境も整わないため、これが廃炉の最難関であり本丸となっている。
【なぜ中断されているのか?】
2024年8月22日に着手されるはずだったが、事前に準備されていた「ロボットを押し込むための棒」の順番が間違っていたことで準備のやり直しが必要になった。これを直したうえで9月10日に再開され、ロボットが一度はデブリに触れたものの、ロボットの先端などに取り付けられたカメラが見られなくなり、再び中断されていた。
【カメラはなぜ不具合を起こした?復旧したの?】
東京電力はカメラの不具合について「強い放射線に晒されたことで内部に電気がたまって不具合を起こした」とみている。
復旧を試みたが、再起動や強い電圧をかけることでも復旧せず、カメラの交換を行うことを決めて、10月24日までに交換作業を完了した。不具合を起こした2台のカメラは同じタイプの別のものに交換された。
【同じミスは起きないの?】
東京電力はカメラの不具合の原因を完全に特定してはいないが、「内部に電気がたまったことが原因とするならば」としたうえで「取り出し作業中に何度かカメラのスイッチを切ったことで電気がたまりやすくなった可能性がある」としている。
この点を解消するために「次はカメラの電源を入れっぱなしで作業を進め、起動状態を維持して電気がたまらないようにすることで同じような不具合を回避する」としている。
【今後、何を目指しているの?】
試験的取り出しでは3グラム以下の燃料デブリを取り出す計画。その構造や成分を分析して、事故が起きたときの状況などを調べ、今後の廃炉計画に反映させていく方針。
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