インバウンド(訪日外国人客)が日本国内で購入した免税品を出国時に所持していない場合、その分の消費税を課税する制度について会計検査院が調べたところ、東京税関が2022~23年度に少なくとも計3億3987万円分を請求していなかったことが判明した。検査院は財務省に対し、課税実施要領が訪日客の増加といった実態にそぐわず「不適切」などと指摘。訪日客が故意に課税逃れを図った可能性も示唆した。
免税品への課税は、免税販売が日本国内での消費や転売を前提としないための措置とされる。訪日客が免税品を購入すると店舗から税関に旅券番号と購入品リストが共有され、こうした情報を基に税関は空港で購入品を確認。所持していない場合は「不審な出国」とみなし、その分の消費税を納付するよう通知している。通知に強制力はないが、再来日した際に滞納者であることを確認できる。
検査院は、22~23年度に「不審な出国」をした訪日客(免税品購入額計約647億円)に対する課税状況を調査。22年度に羽田空港と成田空港から出国した計9人について、消費税計3億3987万円の納付を求める通知が行われていなかったことが判明した。免税品購入額はいずれも1億円を超え、総額は33億9875万円だった。
従来は通知に文書が用いられていたが、22年度からは法改正に伴い、ほとんどの場合に口頭通知のみとなった。一方、文書が必要なケースは、財務省の実施要領で「購入額が1億円を超え、出国予定日を事前に把握できている」場合と定められている。
9人に対応した税関職員は「文書を作成する時間がなかった」ことから通知を断念したなどと、検査院に説明。9人中5人は口頭通知に該当していたが、財務省が税関からの問い合わせに「文書が必要」と誤った情報を伝えていたのが要因だった。残る4人は文書通知の対象だが、搭乗手続きの終了間際に現れたため時間がなかったという。
検査院は、通知方法が文書から口頭に変わったのは出国間際の時間的な制約も踏まえた決定であり、それに反するような実施要領は「不適切」と指摘した。訪日客が制約を逆手に取るなど、故意に課税逃れを図った可能性も示唆した。
免税品を巡っては、転売目的の購入や課税逃れが問題視されている。国は消費税込みの価格で購入してもらい、出国時に免税分を返金する「リファンド方式」の将来的な導入を決定している。【渡辺暢】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。