会計検査院=東京都千代田区で、柴沼均撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で減収した生活困窮世帯に国が無利子で生活資金を貸す「特例貸し付け」制度を会計検査院が調査したところ、貸付総額1兆4431億円のうち、約3割に相当する4684億8959万円が回収不能になったことが判明した。所得の減少が続く住民税の非課税世帯などの返済を免除しているためで、免除の申請は他にも約14万件出ていて、回収不能額はさらに膨らむ可能性があるという。

 新型コロナの特例貸し付けは一時的な生活維持に使える「緊急小口資金」と、日常的な生活費に充てられる「総合支援資金」があり、1世帯当たり最大200万円を貸し付ける制度。低所得者などに国が低金利で融資する従来の「生活福祉資金貸し付け」制度に比べ、適用要件を緩和したり、自立支援計画の策定を不要にしたりするなど、緊急事態でのスピード感を重視した仕組みになっていた。

 国は新型コロナの影響が大きかった2020年3月から22年9月にかけて申請を受け付け、計382万件、総額1兆4431億円の貸し付けを実行。23年1月から返済を求めており、検査院が今回、24年3月末時点の返済状況を調べたところ、131万件の返済を免除し、総額4684億円に上ることが判明した。

 制度を所管する厚生労働省によると、すでに191万件の返済が始まり、6614億円分の回収に着手する一方、離職などを理由とする「猶予」や返済が滞る「滞納」も発生し、24年8月末時点で返済免除の申請がさらに14万件出ている。25年1月からは新たに3133億円分の返済が始まる予定だが、同省地域福祉課生活困窮者自立支援室は「どこまで回収できるのかは分からない。返済を免除した方々のアフターフォローもしっかりしていきたい」と話している。【渡辺暢】

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