「再審開始」の旗を出す支援者ら=金沢市で2024年10月23日午前10時過ぎ、萱原健一撮影
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 福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件の第2次再審請求で、名古屋高裁金沢支部(山田耕司裁判長)は23日、殺人罪で懲役7年が確定して服役した前川彰司さん(59)について、やり直しの裁判(再審)を認める決定を出した。弁護団は新証拠として134点を提出し、「前川さんが事件に関与した証拠はない」と訴えていた。

 この事件は物的証拠に乏しく、前川さんは捜査段階から一貫して関与を否定。1、2審で有罪・無罪の判断が分かれ、第1次再審請求では再審可否の結論が変わっており、複雑な経過をたどっている。

 確定判決は前川さんの知人で元暴力団組員が「前川さんの体や衣服に血が付いていた」とした証言を重視。複数の関係者からも同様の説明があり、判決は説明の変遷を認めつつ「事件の核心は一致しており、全体として信用できる」と述べ、有罪と結論付けた。

 再審が認められるには確定判決を覆す明らかな証拠が必要とされ、再審請求審でも関係者の証言が信用できるかが争点になった。

 弁護側は「事件後に前川さんが乗った車のダッシュボードに血が付いていた」とする元組員の証言に着目した。事件発生から約9カ月後に福井県警が車を押収して調べた際、血液反応は出なかった。

 専門家に鑑定を依頼し、唾を付けたティッシュペーパーで拭き取られていた▽車は9カ月間にわたり日光が当たっていた――とする条件を再現して実験した結果、血液反応が確認された。県警の捜査を踏まえると、そもそも血痕はついておらず、元組員の証言は信用できないと強調した。

 弁護側は検察から捜査報告メモなど287点の証拠開示を受けた。捜査段階と確定審での関係者証言の食い違いを指摘し、「物証がなく捜査に行き詰まった結果、元組員の供述に依存して架空のエピソードを作り上げた」と主張した。

 確定審とは異なる証言も新証拠とした。前川さんの知人男性は「血の付いた前川さんを見た」と証言していたが、今回実施された証人尋問で「見ていない」と撤回。当時の捜査員から自身の犯罪を見逃す代わりに虚偽証言を持ちかけられたと述べた。

 これらに対し、検察側は血液反応について「前川さんに有利な結論を目指した内容で、公正な実験条件ではない」と反論したうえで、知人男性の説明は「不自然、不合理な内容で信用できない」と指摘した。

 関係者らの証言についても信用できると言及。口裏合わせの機会や利害関係のない関係者がそろって、前川さんが事件に関与したと虚偽を述べることは考えられないとして、請求を棄却するよう求めていた。【木島諒子】

福井女子中学生殺害事件

 福井市の市営住宅で1986年3月20日、中学3年の女子生徒(当時15歳)が殺害されているのが見つかった。知人らの目撃証言などから前日19日夜に殺害したとして、福井県警は約1年後に前川彰司さんを殺人容疑で逮捕した。1審は無罪だったが、2審は懲役7年を言い渡し、97年に最高裁で有罪が確定。前川さんが満期出所した後の第1次再審請求では、名古屋高裁金沢支部が目撃証言の信用性を否定するなどして再審開始を認めたが、異議審で名古屋高裁が取り消し、最高裁で2014年に確定した。

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