造幣局(大阪市北区)は、戦時中の金属不足によって製造された陶器の貨幣が、当時の製造業者跡地(京都市東山区)にある倉庫から大量に発見されたと発表した。陶貨(とうか)は50万枚を超える見込みだ。
今回見つかったのは直径15ミリの1銭陶貨で、両面にはそれぞれ富士山と桜花があしらわれている。1銭は1円の100分の1の価値だという。
造幣局によると、戦時中、貨幣材料だった金属が軍需資材として使われたために不足。その代わりとして、製陶業が盛んな京都市や愛知県瀬戸市、佐賀県有田町で計約1500万枚の陶貨が製造された。しかし終戦に伴い、陶貨は市中に出回ることなく粉砕廃棄されたため「幻の貨幣」と言われているという。
陶貨は2023年8月、当時製造を担った「松風工業」跡地にある系列会社で歯科機器の製造・販売会社「松風」の倉庫で発見された。木箱計15箱に入れられた状態で、他にも輸出用に作られた陶器のティーセットや皿も見つかったという。同社の担当者は「意外なところに意外なものがあるんだな」と驚いた様子だった。
陶貨を引き受けた造幣局は、構内にある造幣博物館や、さいたま支局、広島支局での展示を予定している。担当者は「資料的価値は高い。当時の陶貨の製造状況の解明につながれば」と話した。【井手千夏】
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