原発事故時の屋内退避について再検討する原子力規制委員会の検討チーム=東京都港区で2024年10月18日午前10時2分、高橋由衣撮影

 原発事故時に5~30キロ圏内の住民が行う「屋内退避」を再検討している原子力規制委員会の検討チームは18日、中間まとめを示した。屋内退避する期間の目安を3日間とし、重大事故対策が奏功した場合はそれを待たずに一斉に解除できることもあるとした。

 チームは今後、各原発30キロ圏にある全自治体に意見を聞き、今年度内に報告書をまとめる。住民避難を定めた原子力災害対策指針(原災指針)の改正が必要かどうかは今後検討する。

屋内退避用テント式シェルターに避難する訓練の参加住民=佐賀県唐津市で2015年11月28日午前10時34分、岩崎邦宏撮影

 原災指針では、原発事故時、建物内で被ばくを防ぐ屋内退避を5~30キロ圏の住民に求めている。しかし期間や解除に関する具体的な規定はなく、周辺自治体から懸念が出ていた。

 チームは、新規制基準が求める重大事故対策が奏功した三つのケースを想定。その結果、いずれも放射性物質の放出が抑えられ、30キロ圏の放射線量が十分低くなった。このため、放射性プルーム(放射性物質を含む雲)が滞留していないことが確認できれば、屋内退避の一斉解除は可能だとした。

 ただ、重大事故対策が奏功したかどうか事故直後に判断することは難しいため、事故が起きれば、従来通り5~30キロ圏全域で屋内退避を求める。その上で、屋内退避を続ける期間を3日間とした。国の防災基本計画で、自治体に最低3日間の水や食糧の備蓄を求めているためだ。それ以上事故が続く場合、原則として物資を支援して屋内退避を続けてもらうが、支援が難しい場合は避難に切り替えることもあるとした。

 一方、能登半島地震では多くの建物が倒壊し道路が寸断。原発事故と自然災害が同時に起こる「複合災害」では屋内退避自体ができない問題が露呈した。しかし規制委は「自然災害の防災で対応する問題」としてチームの検討対象にせず、中間まとめでも触れなかった。【高橋由衣】

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