2025年大阪・関西万博(4月13日~10月13日)の開幕まで13日で半年となった。全国のコンビニエンスストアや旅行会社では入場券の紙チケットの販売が始まるほか、一部前売り券では開幕日の来場予約もスタート。参加国が自前で建設する海外パビリオンは進捗(しんちょく)に差はあるものの47カ国中44カ国が着工した(3日時点)。ベールに包まれた見どころを一足早く紹介する。
チェコパビリオンは「人生のための才能と創造性」をテーマに、木製パネルで作られた構造体を伝統産業のガラスが覆う精巧なデザインだ。万博を通じて観光客の誘致や産業振興につなげようとする機運は高い。
チェコはヨーロッパ中央の内陸国で、北海道とほぼ同じ約7万8800平方キロ、人口は1000万人あまりだ。首都プラハは石畳の道に古城や教会など風格ある町並みを残し、ブルタバ(モルダウ)川に架かるカレル橋などの観光地は多くの人でにぎわう。
観光関係者によると、新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻が観光にも影を落としており、万博を機に日本からの観光客が増えることへの期待が高まっているという。
商工業の中心地である第2の都市・ブルノ市は、遺伝の法則を発見した生物学者メンデルゆかりの地。パビリオンでは2025年7月に「メンデルの週」と名付けたイベントが行われる。05年愛知万博以降、来訪する日本人観光客が顕著に増えたといい、マルケータ・バニュコバー市長は「ブルノには質の高い研究拠点や自然、文化遺産がある。より多くの日本人に来てほしい」とアピールする。
パビリオンで提供予定のチェコ料理は、ブルノ市で飲食店を営むトマーシュ・レゲさん(44)が担当する。マスや豚の膝肉を使った料理、カモ肉の中華まん、ジャガイモやプラムの入ったダンプリング(小麦粉団子)などを考案。ビールやワインとともに楽しめそうだ。レゲさんは日本で働いた経験があり「日本人客の感覚は理解しており、伝統的なチェコ料理にモダンさを加えた」と説明する。
音楽や美術など豊かな文化で知られる国でもある。パビリオンでは週末にコンサートを開き、交響曲第9番「新世界より」などを残した同国出身の作曲家ドボルザークなどを紹介する。 また、同国出身の画家アルフォンス・ミュシャの生誕165周年にあたる25年7月24日に「ナショナルデー」を開催する。ミュシャはスラブ民族の歴史を20枚の大型キャンバスに表現した代表作「スラブ叙事詩」などで日本でも人気がある。ミュシャのデザインはチェコ国内で発行される大阪・関西万博の記念切手に使われる予定で、ひ孫マーカスさんは「平和を追求し、他国の文化に敬意を払ったミュシャの哲学は万博の精神に合う」と話す。
チェコ政府はパビリオンで、イノベーション、有望なスタートアップ企業や地域の人材の紹介を目指す。イジー・コザーク副外相は「伝統だけでなく、最も工業化され、現代的な国であることを万博で見せたい」と語る。
期間中は週替わりのトピックで、ビジネス関連の会議やワークショップをパビリオンで開く。25年6月中旬にナノテクノロジーをテーマに会議を開くメーカー「エルマルコ」のミロスラフ・マソプスト最高経営責任者(CEO)は「日本やアジアは重要な市場で、万博はこの分野での私たちの主導的な地位と可能性について、チェコ代表として説明できる機会になる」と意気込む。
名産品はガラスや宝石の一種ガーネット。パビリオンに用いるガラスやシャンデリアはチェコ製を使う。70年大阪万博に出展したガラス彫刻家の名にちなんだパビリオンのキャラクター「レネー」の関連グッズが販売される予定だ。
ガーネットを使ったジュエリーを製造する「グラナート・トゥルノフ」は万博を通じて日本市場への進出を目指す。ペトラ・パブリシュトバー営業部長は「パビリオンでは才能と創造性だけでなく、科学、研究、イノベーションの成果など、チェコが注目に値する魅力的な居住地として紹介される。参加できることにわくわくしている」と話していた。【高木香奈】
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