オスプレイの飛行による風圧で曲がったとみられる福祉施設屋上の簡易テントの骨組み=宮崎県延岡市で2024年8月16日午後3時18分、重春次男撮影

 宮崎県延岡市で今夏、米軍輸送機オスプレイが複数の日にわたって飛行した。「電柱近くを飛んでいた」「家が揺れるぐらいの低さだった」といった証言が市に寄せられ、かなりの低空で飛行していた可能性がある。なぜ米軍オスプレイが繰り返し延岡市上空に現れたのか。背景として、有事を見据えた米軍の作戦変更を挙げる声もある。

 「何らかの飛行体が低く飛んでいるという情報は過去にも年数件程度あったが、これほど短期間に集中したことはなかったのではないか」。延岡市危機管理課の担当者は、続々と寄せられたオスプレイの目撃情報に戸惑いの声を上げる。

米軍オスプレイが目撃された宮崎県延岡市内の主な場所

 市によると、目撃情報は7月22日1件▽25日6件▽30日1件▽8月1日2件――の計10件。住宅地などでの低空飛行や騒音を訴える声で、「最初は暴走族かと思った」と表現する市民もいた。

 県や市が防衛省九州防衛局に確認したところ、この時期に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のMV22オスプレイが飛行していたことが判明した。7月28日~8月7日に大分県などで実施された日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」に参加した機体で、共同訓練とは別の「米軍独自の訓練」で延岡市上空を飛んだという。県と市には事前に連絡はなかった。

 延岡市古川町で障害のある子どもたちのデイサービス事業などを展開する「はーと介護」の施設では2階建て部分の屋上にあった簡易テントが壊れた。簡易プールの日よけに使っていたもので、スチール製の骨組みが「く」の字に曲がっていた。7月25日の夕方に2回、オスプレイが2機編隊で付近を飛行していたのを職員が目撃しており、関連が疑われる。

 施設の女性職員(38)は木造の別棟で子どもたち約10人と帰りの会をしていたところ、ごう音と地響きに襲われた。「最初は竜巻か大地震が起きたかと思った。(オスプレイが)低く飛び、機体が大きく見えて怖かった」と顔をしかめる。同じ建物の事務所にいた施設経営者の桑原英一さん(70)によると、壁や窓がガタガタと激しく振動した。驚いて外へ出ると、プロペラを上向きにしたオスプレイが低空で飛んでいた。「子どもたちがおびえて、けがをしていたらと思うとぞっとする」

 オスプレイはどの程度の高度で飛行していたのか。九州防衛局は取材に対し、「米軍の運用に関わる」として、明らかにしていない。テントの破損については因果関係を調査しているとみられる。

 オスプレイを巡ってはトラブルが相次ぎ、2023年11月には鹿児島県・屋久島沖で空軍CV22が墜落する事故が発生している。米軍は24年8月、変速装置(ギアボックス)内のギアの破損による左翼の故障と人為的な判断ミスが原因だったとする調査報告書を公表したが、ギアが破損した原因は不明のままだ。

 「はーと介護」の施設近くに住み、オスプレイを目撃したという自営業の60代男性は「怖いし、事故があれば住民も巻き添えになる。絶対に市街地の上を飛んでほしくない」と訴えた。【重春次男】

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