静岡県警本部=高場悠撮影

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)に対する静岡地裁・再審無罪判決について、静岡地検は9日、上訴権を放棄した。10日の控訴期限を待たずに袴田さんの無罪が確定した。

 畝本直美検事総長は8日、談話を発表し、犯行着衣とされてきた「5点の衣類」は捜査機関の捏造(ねつぞう)だったと断定した無罪判決を「到底承服できず、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容」と批判した。一方で、袴田さんの法的地位が長期間、不安定な状況に置かれてきた事情を考慮し、控訴しない方針を明らかにしていた。

 9日には静岡県警の津田隆好本部長が取材に応じ、「袴田さんが長きにわたって法的地位が不安定な状況に置かれていたことについて申し訳なく思う」と述べ、袴田さん本人に伝えたいとする意向も示した。

 また、「最終的に事件の犯人が分からないとなったことは、遺族に対して大変残念に思う」とも語った。

 最高検は、長期にわたった袴田さんの再審請求手続きについて今後検証する方針。

 事件は66年6月30日未明に発生。清水市のみそ製造会社の専務宅が放火され、焼け跡から専務(当時41歳)、妻(同39歳)、次女(同17歳)、長男(同14歳)の遺体が見つかった。会社の従業員だった袴田さんが逮捕・起訴され、死刑とされたが、第2次再審請求審で再審開始決定が出て確定し、静岡地裁が2024年9月26日、無罪判決を言い渡していた。【丘絢太、最上和喜】

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