松山市で防災士の資格保有者が1万人を突破した。市によると、全国の市区町村では初めて。市は2005年度から資格取得費用の全額を公費で負担し、24年度からは取得者のレベルアップを目的とした講座を開講するなど、育成に力を入れている。市の担当者は「質も向上させ、いざという時の実践に役立ててもらいたい」と意気込む。
防災士は、NPO法人「日本防災士機構」が認定する民間資格。1995年の阪神大震災を機に創設され、2003年に第1号取得者が誕生した。知識や技能を身に付けることで、地域や職場の防災力を高め、災害時の避難や被災地支援に貢献することが期待されている。近年は、多発する豪雨災害や南海トラフ巨大地震の備えなどから、特に注目度が高まっている。
松山市は05年度に当時としては全国で初となる資格取得費用の公費負担を始め、教職員や福祉施設職員などを中心に取得を働きかけてきた。日本防災士機構によると、24年8月末時点で松山市は取得者が1万39人に達し、市区町村別の登録者数が全国1位に。9月末現在では1万244人となり、2位の仙台市の4559人に倍以上の差を付けた。都道府県別(9月末現在)でも、愛媛県は2万4376人で東京都の2万4399人に次ぎ、全国2位となっている。四国では、高知県が6522人▽徳島県が6404人▽香川県が3946人。
身に付けた知識や技術を、いざという時に活用できなければ意味がない。そこで、松山市は資格取得者のスキルアップを目指し、24年度から防災・気象情報の収集方法や避難所の開設・運営方法などテーマ別に「フォローアッププログラム」を実施している。親子3人が亡くなった7月の同市緑町の土砂災害の避難所では、各地区の防災士が段ボールベッドの配備を市に要請するなど避難所運営に力を発揮したという。
1万人達成を記念し、市は9月25日、愛媛大防災情報研究センターや市自主防災組織ネットワーク会議など、育成に貢献した6団体に感謝状を贈った。同センターでは、14年に市と連携し、養成講座を開講。他大学を含む学生を対象にした環境防災学講座も15年から実施し、これまでに1300人以上の学生防災士を養成している。副センター長の二神透准教授は「若い防災士の活躍は地域の活性化につながる。これからも増やしていきたい」と話している。【広瀬晃子】
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