無断転貸されていたことが分かった栃木市所有の国登録有形文化財「旧足利銀行栃木支店」=栃木市万町で2024年9月26日午後0時39分、太田穣撮影

 栃木市が民間からの事業提案を受け、市内の飲食業者に賃貸していた国登録有形文化財「旧足利銀行栃木支店」が市に無断で転貸されていたことが分かった。市は契約違反として今年3月までの退去をこの業者に求めていたが、7月にずれ込んだ。市は4カ月分の遅延違約金20万円を業者に請求し、近く新たな借り手を公募する。

 市が26日、市議会に報告した。市によると、建物は1934年の建築。73~2004年は旧栃木市の市教委庁舎として使われ、08年には昭和前期の銀行建築の好例として文化財登録された。

 市は施設の有効活用のため、07年度の事業プロボーザル方式で公募、選定した市内の飲食業者と08年4月に10年間の賃貸借契約を締結。満了した18年4月からさらに契約を更新したが、22年12月、借主が別の飲食業者に転貸していることが発覚した。

 このため、契約を23年2月で解除し、原状回復などの猶予期間を見込んで今年3月までの退去を求め、23年3月~今年3月の定期借家契約を締結。しかし、借主と転貸先との合意が整わず、明け渡しは7月にずれ込んだという。

 建物は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のロケにも使われ、契約当初は映画名を冠した店名で営業していたが、19年10月に別の店名で営業を始めた。道路を挟んで市庁舎の北側にあるため、市職員も店名などの変更に気付いたが、借主側は「食品衛生法などの届け出もこちらで行い、(系列の)1店舗として営業している」「業務委託している」などと説明していたという。しかし、借主が転貸先から「厨房(ちゅうぼう)使用料」などとして、市に支払う月額5万円の家賃より高額を受け取っていたことが分かり、業務委託ではなく転貸と判断した。

 一方、借りていた飲食業者(57)は「業務委託のつもりだったが、市の判断なので仕方がない」と話した。【太田穣】

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