石川県の能登半島北部などを襲った豪雨で、県内では2人が行方不明、5人が連絡のつかない安否不明となっている。24日も自衛隊や警察、消防などが懸命の救助作業を続けた。
珠洲(すず)市大谷町の浄正(じょうしょう)寺にはこの日午前5時、消防や警察、自衛隊で構成された計約200人が集まった。寺に滞在していたとみられる貞廣(さだひろ)一枝さん(79)との連絡が途絶えていたためだ。寺院兼住宅は屋根まで、豪雨により流れ出した土砂で埋まっている。
「1月の能登地震後、ここに住んでほしくて、寺の雨漏りや瓦の崩れを直したが、余計なことをしてしまった」。近くに住み、作業を見守っていた大工の舟本一男さんは涙を流した。
舟本さんは2年前の2022年、当時暮らしていた京都から故郷の大谷町に戻った。それから毎日のように、貞廣さんと言葉を交わした。
元日の能登半島地震後、僧侶でもある貞廣さんから「ここを守りたい」と言われた。寺は地震で被災しており「寺が潰れたままでは地元に人が帰ってこない」と思い、再建に向けて大工の腕を振るった。
だが、今回の豪雨で仏像も埋もれてしまい「もう再建は無理だ」とうなだれた。
豪雨前日の20日、自宅の仏壇でお経を上げてもらう予定だった。20日は雨が降ってきたため「お経は翌21日にしましょうか」というやり取りが、貞廣さんとの最後の会話になった。
24日は朝から捜索活動を見守り、午後3時に泥水で満たされた居間で人が見つかった。その後、死亡が確認された。
舟本さんは「貞廣さん本人で間違いないだろう。覚悟はしていたので、見つかって良かったと思う。怖かっただろうに……」と話した。
この日は、塚田川が氾濫した輪島市久手川(ふてがわ)町でも、警察など500人以上の態勢で捜索が続けられた。
愛知県豊橋市の捜索救助犬活動チームも捜索救助犬1頭を投入した。指揮をとった岐阜市の山田俊彦消防司令長は「流木を避けながら広範囲にわたって捜索している。行方不明の方を一刻も早く見つけるべく、全力を尽くす」と話した。【稲生陽、小坂春乃】
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