坑口を探す掘削工事について説明する井上洋子共同代表=山口県宇部市で2024年9月24日午前10時10分、福原英信撮影

 戦時中の1942年、大規模な水没事故があり朝鮮半島出身の労働者を含む多くの人々が亡くなった長生炭鉱(山口県宇部市)で24日、遺骨の収集を目指す市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」が炭鉱の出入り口(坑口)を見つけるための掘削作業を始めた。会の井上洋子共同代表は「犠牲になった人の遺骨を見つけ出し、遺族に届けたい」と意気込む。【福原英信】

 長生炭鉱は宇部市東部にあった海底炭鉱で、事故は42年2月3日に坑口から約1キロ沖合で発生。朝鮮半島出身の労働者136人を含む183人が亡くなった。炭鉱跡近くの追悼ひろばに建つ2基の追悼碑には、1基に「日本人犠牲者」、もう1基に「強制連行 韓国・朝鮮人犠牲者」と記されている。海上にはピーヤと呼ばれる排気口が残っており、市民団体は陸上に坑口があると考えている。遺骨は収集されておらず、今も海の中に残されたままとなっている。

長生炭鉱があったことを伝える2本のピーヤ=山口県宇部市で2024年9月24日午前11時46分、福原英信撮影

 市民団体は24日、証言などから坑口があったと推測される場所で重機を使った土地の掘り起こし作業を始めた。坑口は事故後に埋め立てられ、現在は労働者が坑内に入る前に安全を祈願したと言われる神社の跡地から海側に進んだ場所の地下4メートルほどの地点にあると推測されるという。坑口を発見できた場合は、専門的な技術を持つダイバーが通路に入り、遺骨を見つけて収集するための調査をする予定だ。

 井上共同代表は掘削作業の開始を受けて「とうとう、この日が来た。戦時下の石炭増産のために犠牲になった人たちのご遺骨を、残された時間のそう長くない遺族に一日も早く届けたい」と語った。

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