一人っ子へのいわれなき偏見を払拭しようと、当事者らが出版した電子書籍「ひとりっ子談義 ひとりっ子と親の本音」=安室和代さん提供

 「きょうだいがいなくてかわいそう」「わがまま」「甘やかされて育った」……。一人っ子に対する、いわれなき偏見を払拭(ふっしょく)しようと、当事者によって出版された電子書籍が話題を呼んでいる。その名も『ひとりっ子談義 ひとりっ子と親の本音』――。筆者の一人で、一人っ子で育った安室和代さん(45)は「同じ境遇の人たちが楽に生きられるような一冊になってほしい」と願っている。

 電子書籍は、安室さんと、一人っ子の親である三浦直子さん(53)の共著。一人っ子ならではの「あるある」体験について2人が対談する形式で進んでいく。一人っ子に対する社会のイメージと実際の「ズレ」を指摘する場面も多々ある。

 安室さんの両親は共働きで帰りが遅く、家族がそろうのは休日くらいだったが、両親が言い争いをすることも珍しくなかった。自分以外に両親しかいない家庭内で、けんかが始まると、「(2人とも出て行き)置いてきぼりにされるのではないか」と強い恐怖を覚えた。そのため、幼少期は常に両親の顔色をうかがい、不穏な雰囲気になると場を和ませることに終始した。人の表情や仕草に敏感になった安室さんは、一人っ子は「わがまま」と言われることへの違和感を抱く。

 また、一人っ子は「親の愛情を独り占めできて羨ましい」とよく言われるが、安室さんは書籍の中でこう記している。

<親の機嫌が悪いときも集中してダメージ受けるよね(笑)兄弟がいたら分散されるんだろうけど。つまり、「愛情」という言葉にすると聞こえは良いけど、親の期待やら心配やら不安やらも一身に背負わされている感じはあるかな>

 一方、両親の介護をする場合にきょうだい間の方針の違いでトラブルになることがないなど「一人っ子で良かった」という点も書籍では指摘されている。安室さんは「『一人っ子はかわいそう』と言われるが、一人でもきょうだいがいても、良いことも悪いこともあることを伝えたい」と話している。

 書籍では、一人っ子の親ならではの「あるある」エピソードも紹介。三浦さんは中学生になった一人っ子の長男を育ててきた。きょうだいがいない分、親が子どもの遊び相手をするのは大変だったが、メリットもあった。「自分の時間が持てる」「PTAの役員が1回で終わる」「1人に愛情を注げる」などだ。

「気持ち、楽に」

イメージ写真=ゲッティ

 2人は約20年前、同じ習い事をしていて知り合った。一人っ子に関する話題で盛り上がり、ちまたにあふれる一人っ子へのネガティブな言説に対し、「プラス面もマイナス面もすべて書こう」と電子書籍の出版につながったという。2021年12月の出版後、読者からは共感の声が相次いだ。安室さんは「マイナスイメージのせいで、自分から『一人っ子です』と言える人はなかなかいない。一人で抱え込まず、この本を読んで少しでも気持ちが楽になってほしい」と話す。

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