2日広島市のクリニックで塩素ガスが発生した事故。
原因として考えられているのは、”混ぜるな危険”の「2つの液体」の存在です。
番組が別の病院を取材すると透析治療には欠かせないものだということがわかりました。
2日、広島市中区のクリニックで塩素ガスが発生し、職員や患者9人が体調不良を訴えるなどした事故。
警察は当時、作業にあたっていた臨床工学技士の回復を待って状況を聞き、業務上過失致傷などの疑いも視野に捜査する方針です。
なぜ塩素ガスが発生したのか?
2日会見を開いたクリニック側が原因としてあげたのが、透析の機器を消毒するために使う酸性の「酢酸」と塩素系の「次亜塩素酸ナトリウム」。
塩素ガスを発生させるとして「混ぜるな危険」で知られている酸性と塩素系2つの液体を容器に補充する際、混ぜてしまった可能性があると説明しました。
【中島土谷クリニック・森石みさき院長】
「透析の装置の点検だとかするものについては、担当は変わるが1人でやっている。作業手順や複雑なものはもう一度検討しなおさなければならない」
取材班は広島市内にある透析クリニックを訪ねました。
【野川アナ】
「機械室とありますけど…失礼します。大きな機械が並んでいますね。あと室内、ツンとした匂いがします」
Q:こちらの部屋はどういった部屋?
【どい腎臓内科透析クリニック・里 敏孝臨床工学技士】
「水道水を処理して綺麗な水をつくって透析液にかえる部屋」
その部屋の中に少し距離を離して置かれているのが「酸性」の液体と「塩素系」の液体です。
【どい腎臓内科透析クリニック・里 敏孝臨床工学技士】
「(それぞれ別々に)タンクから吸い上げられて200倍程度に希釈して透析装置に流れていく」
実は透析クリニックにとって酸性と塩素系の液体は洗浄や消毒などのために”欠かせないもの”だといいます。
【どい腎臓内科透析クリニック・里 敏孝臨床工学技士】
「酸性の薬剤は透析液にカルシウムが入っているので配管に蓄積したカルシウムを除去するために使用している。塩素系のほうはタンパク質汚れに強いので配管に患者様の血液から出たたんぱく質などが付着するので溶かすために塩素系の薬剤を使用している」
そして1日およそ2リットルほど使用し週に1回程度補充をしますが、こちらのクリニックでは常に2人体制で行っています。
「補充をします。酸性タイプです」
「酸性タイプです」
換気扇の作動確認や防護服、メガネなどを装着し声を掛け合いながら進める作業…。
【野川アナ】
「箱に入った液体をタンクに詰め替えています」
そして、詰め替え終わり蓋を閉めた後も…。
「液漏れありません」
【野川アナ】
「こぼれた液体がないかということも二人で声を掛け合って確認をしました」
万が一混ざってしまった際の対応について聞いてみると…。
【どい腎臓内科透析クリニック・里 敏孝臨床工学技士】
「すぐに排水する。施設の外に中和槽がありますので、薬剤が中和されて無毒化されて排出される」
【野川アナ】
「中和槽がこの病院の外にあるこちらで中和されて下水に流されるということです」
透析に”欠かせない”だけに、その危険性を理解し対策を講じた取り扱いが重要となる2つの液体。
これは実際に「塩素ガス」の発生を再現した映像です。
塩素ガスは猛毒で発生させないことが第一ですが、万が一発生してしまった際にその発生を速やかに停止させる「抑制剤」の製造メーカーでは、今回の事故を受けて全国の病院などからこれまでにないほど問い合わせが急増しているということです。
(スタジオ)
補充という作業は決して難しいものではなく、”慣れ”や”不注意”によるヒューマンエラーをいかに防ぐかが大切だと現場の方々はおっしゃっていましたが、ヒューマンエラーのほかに怖いというのが地震だということなんです。
きょう伺ったクリニックでは、万が一強い揺れが来た時に少しでもタンクからこぼれるリスクを減らすため固定ではなくキャスターをタンクの下につけているということでした。
また、補充の仕方についても何か業界で統一したガイドラインなどがあるわけではないそうで、今後、今回のことを受けて業界団体などが動き出すのかどうなのか、といったところも気になるところです。
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