インタビューに答える福和伸夫氏=名古屋市中区で2016年5月16日、兵藤公治撮影

 宮崎県沖の日向灘で起きた地震を受けて発表されていた南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の呼び掛け期間が、15日夕に終了した。今回の臨時情報を教訓に、私たちは今後どう行動すればいいのか。臨時情報の制度設計にも携わった、福和伸夫・名古屋大名誉教授(地震工学)に聞いた。【聞き手・島袋太輔】

 初めてとなる臨時情報の発表は、壮大な社会実験だった。注意を呼び掛ける1週間という期間は、社会が我慢できる限度だ。

 臨時情報の周知が進まず認知度が低かったので心配していたが、買い占めといった過度な動きやデマの拡散は少なく、比較的落ち着いて対応できた。新型コロナ禍での緊急事態宣言を経験したおかげで、国民に制約を課すような状況下でも冷静に行動できた。

 「巨大地震注意」は次の地震が起きることがほとんどない「グレーな情報」だが、対策を促すことに意義がある。甚大な被害が出た後に備蓄品は確保できない。事前の対策がいかに重要か認識し、家具の固定や備蓄品の確保、安否確認の方法などを考えてほしい。

 (警戒度が上の)「巨大地震警戒」が出ると、事前避難など相当厳しい対応になる。国の存続が危ぶまれ、特別な対応をせざるを得ない。臨時情報の発表で、大地震が起きたことを想像し、事前対策の必要性を実感したと思う。被害を減らす努力を国民がしなければいけない。

 今回で臨時情報の認知度は相当上がり、地震対策は前進した。課題は対応にバラツキがあった点だ。事前の検討の有無で、自治体の対応は分かれたと思う。万一を想定し、一部自治体は海水浴場を閉鎖するなど厳しく対応した。隣接した自治体で対応が異なると社会は混乱する。民間企業でも個別に対応を決めるのではなく業界で考えた方がいい。同じレベルの対応が理想だ。

 臨時情報でどう動くか議論できるスタートラインにようやく立てた。今回の経験を機に、みんなが次に生かしてほしい。グレーな情報と社会がどう付き合うかの練習が始まる。

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