交流サイト(SNS)を通じ、対面せずに現金をだまし取る「SNS型投資詐欺」の被害が相次いでいる。非課税枠が拡大した新NISA(少額投資非課税制度)が始まるなど投資ブームに乗じる形の手口で、著名な実業家などの名前をかたり、中高年が被害に遭うケースが目立つ。警察当局は注意を呼びかけ、SNSの投資広告などで名前をかたられた著名人も自民党に対策を求めるなど事態打開に向け動き出した。

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東京都内に住む70代男性のスマートフォンに、実業家やネット論客として著名な堀江貴文氏の名前をかたるメッセージが届いたのは昨年秋。もともと堀江氏のファンで、普段から出演する動画などを閲覧していたという男性。それが被害の契機となった。

堀江氏の株式や経済に関する動画を閲覧したすぐ後に偶然、届いた憧れの堀江氏を名乗るメッセージ。「舞い上がってしまった」。男性は本人からのものと信じて疑わなかったようだ。被害発覚後、警視庁の捜査員にも「最初にどうやって接点を持ったのかも覚えていない」と話したほどだったという。

信頼関係構築

偽の堀江氏からのメッセージに男性が返信すると、「アシスタント」とする人物を紹介され、それ以降は、LINE(ライン)を通じてアシスタントとのやり取りが始まった。

男性に対して投資を持ち掛け、実際に現金を振り込ませるまでに、偽の堀江氏や「アシスタント」がかけた期間は約1カ月。やりとりを続ける中で、信頼関係を構築していったとみられる。

男性は指示されるままにスマホにアプリをインストールし、指定口座に投資金を振り込んだという。画面上では運用益がどんどん増えているように見えたが、男性が現金を引き出そうとすると、連絡がつかなくなった。

指示を疑わず

約半年間での入金額は十数回で計約1億4千万円に上る。SNSの投資広告の多くは、こうした著名人らのなりすましとみられる。警察庁によると、SNS型投資詐欺の昨年1年間の被害は2271件で、男女ともに40代以上が目立つという。捜査関係者は「犯人との間で一度信頼関係が構築されてしまうと、銀行口座への振り込みなど普段ならあやしいと思えるような指示も疑わなくなってしまう」とし、警戒を呼びかけている。(外崎晃彦)

被害278億円、投資熱高まり背景に

警察庁によると、SNS型投資詐欺に関する被害は令和5年の後半から増加傾向にあり、昨年1年間の被害総額は2271件で約277・9億円に上るといい、同庁は特殊詐欺(昨年の被害総額約441億円)に匹敵する深刻な被害だとみている。

その背景の一つとしては、投資ブームがあるとされる。

投資できる金額などが大幅に拡充された新NISA(少額投資非課税制度)が今年1月からスタート。捜査関係者は「国が近年、投資を積極的に呼び掛けている上に、連日にわたって日経平均株価が最高値を更新するなど投資熱の高まりが背後にあるのではないか」と推測している。

被害防止の方法としては、フィッシング詐欺などの被害防止システムを提供する「トビラシステムズ」(名古屋市)は安易な接触を避けるように促す。担当者は「投資関連サイトへの登録やアプリのインストールに応じないことやLINEのグループに自動追加されない設定に変更することが有効だ」と話している。

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