キャンプ中のハラスメント
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 夏休みになり、野外活動の団体などが主催する泊まりがけのキャンプに子どもを送り出す家庭も多いだろう。親元を離れて自然に親しむことは貴重な経験となるが、一方で保護者の目が届かない環境はハラスメントの温床にもなりやすい。

 30年以上のキャンプ指導歴があるNPO法人「東京都キャンプ協会」事務局長の佐藤繁一(しげかず)さん(53)に、参加する際の注意点を聞いた。

貴重な経験の一方、嫌な思いも

 各種団体が企画するキャンプの内容は多種多様で、個人や団体、家族単位で参加するプログラムのほか、未就学児や小学生らに「お泊まり」を体験してもらうものもある。

 保護者が同伴しないプログラムでは、電気やガスがない中で仲間と協力して食事を用意したり、テントで一夜を過ごしたりするかけがえのない経験が得られる。

 普段とは違う環境に身を置くことで、改めて自分の可能性に気づいたり、ものごとに向き合う意欲を見いだしたりする子どもは少なくない。佐藤さんは「キャンプは子どもたちの生きる力を高めてくれます」と語る。

 しかし、参加者が嫌な思いをすることもある。

 佐藤さんによると、キャンプは参加者にとって不慣れな活動が多く、どうしても教える側の立場が強くなりがちだ。

 組織に長年いる指導者が暴言を吐いたり性的な冗談を言ったりしても、周囲が止められないケースがあるという。

 佐藤さん自身も「性別による分業を押しつけたりひわいなことを言ったりと、残念なハラスメントの例を見聞きしてきた」と振り返る。

 深刻な事態を招いたケースもある。

 2017年には、キャンプに参加した男児らの服を脱がせて撮影するなどしたとして、元旅行代理店社員や小学校臨時教員だった男性らが児童ポルノ禁止法違反容疑などで逮捕された。23年にも、主催したキャンプで女児らの体を触るなどしたとして、大阪府内の市議だった男性が強制わいせつ容疑で逮捕されている。

キャンプの持つ特殊性

 そもそも、ハラスメントが起きる背景には「キャンプの持つ特殊性」があると、佐藤さんは指摘する。

 特殊性とは、経験や能力を持った指導者との間に上下関係が生まれやすいことに加え、子どもには何が起きたか理解できない場合があること、「グループの輪や空気」が優先され「キャンプはそういうもの」と許容されがちなことなどを意味する。

 そのため、キャンプが終わった後に苦情を言いづらいといった問題もある。

 佐藤さんは「まずは主催者側がこうした実情を把握し、ガイドラインを作成するなどして『ハラスメントを黙認しない』という意識を共有することが重要です。その上で、不安や不信を抱いている参加者がいないかを確認し、何かあったら相談してもらいやすいような環境を整える必要があります。参加する側も相談先がしっかりしているかを見極めてほしい」と強調する。

 実際、佐藤さんが理事を務め、子ども向けのキャンプも主催するNPO法人「国際自然大学校」では苦情の相談窓口を設けている。

 また、子ども会や町内会などの単位でキャンプを行う場合は、トラブルがあった時の対処方法を事前に相談し、参加者に周知しておくと良いという。

性的被害防ぐには

 一方で、深刻な性的被害を防ぐにはどうすればいいのか。

 佐藤さんは「大人と子どもが2人きりになる環境をできるだけ作らず、誤解を招かないようにすることも重要だ」と話す。

 具体的には、夜間に子どもがトイレに行く場合はできるだけ大人2人で付き添う▽大人と子どものテントを分ける▽盗撮防止のため活動中のスマートフォンの使用は最小限とする――などの対策を挙げる。

 参加者も、主催者側がそうした対策を取っているかどうかを事前に確認することが望ましいという。

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行してから、団体でのキャンプが復活しつつある。

 佐藤さんは「対策や相談窓口がしっかりしていれば、子どもたちにとって本当にいい経験になる。暑さに気をつけながらぜひ楽しんでほしい」と呼び掛けている。【平塚雄太】

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