神戸市の山中から8個の金属片が見つかった。さびだらけで、形や大きさもバラバラ。これは一体何の破片なのか。科学の力で解き明かそうとする試みが始まった。
金属片を見つけたのは、神戸大大学院生の西岡孔貴(こうき)さん(26)=大阪市=らのグループだ。西岡さんは太平洋戦争末期の1945年7~8月、米軍が原爆投下の訓練として日本各地に投下した「模擬原爆」について研究している。
通称「パンプキン」
模擬原爆は長崎に落とされたプルトニウム型原爆「ファットマン」(重さ約4・5トン)と同じ形状で、通常の爆弾に使われる火薬が詰められていた。ずんぐりとした形がカボチャに似ていることから「パンプキン」と呼ばれた。45年7月20日~8月14日、全国に計49発投下され、400人以上が犠牲になった。
西岡さんは大学1年生だった7年前、広島市の原爆資料館で模擬原爆の展示を見たのをきっかけに関心を持った。49発のうち、神戸市、福島県平市(現いわき市)、徳島県に落とされた3発は詳しい着弾地点が分かっていない。このうち、米軍資料に「神戸製鋼所(神戸市)を第1目標にした」と記録が残る模擬原爆の着弾地点について調べ始めた。地元の警防団員の日記を基に、米軍が撮影した航空写真を確認。六甲山系の摩耶山(まやさん)で山肌がえぐられたような白い地点を見つけた。
金属探知機で発見
果たしてここが模擬原爆が落とされた場所なのか。昨年12月、西岡さんは「空襲・戦災を記録する会」事務局長の工藤洋三さん(74)=山口県周南市=らと現地調査に入った。登山道もない場所だったが、金属探知機を使って約3時間かけて探索。金属片8個を掘り出した。ねじ山の跡などがあることから何らかの爆弾の破片である可能性が高いという。
西岡さんと工藤さんらは「パンプキン爆弾を調査する会」を結成。見つけた金属片と、別の場所に投下された模擬原爆の破片、通常爆弾の破片の成分分析を民間会社に依頼し、爆弾の種類の特定を試みている。
CFで分析費用募る
分析結果を多くの人と共有し、模擬原爆への関心を広げるため、成分分析に必要な費用約87万円をクラウドファンディング(CF)で募ることも決めた。8月29日まで受け付けている(アクセスはQRコードから)。
7月20日にはオンラインイベントを開き、調査する会のメンバーがこれまでの経緯などを報告する。来年の戦後80年に向けて、諸説あるという模擬原爆の表面の色や、福島と徳島の着弾地点についても調査を進めたいという。
西岡さんは「原爆投下につながった模擬原爆の歴史を埋もれさせないために、広く世の中に伝えていきたい」と意気込む。工藤さんは「今回の分析の有効性が確認できれば、戦争体験者が少なくなる中、一つの調査手法として別の研究にも応用できるかもしれない」と話した。【高木香奈】
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