ネッタイシマカの成虫=国立感染症研究所昆虫医科学部提供

 蚊が媒介する感染症「デング熱」が世界で大流行し、今年の患者数が1000万人を超えた。世界保健機関(WHO)などの集計で判明した。年間患者数が過去最悪だった2023年(約630万人)を既に大きく上回っており、今後は夏季を迎えた地域での流行も懸念される。

 デング熱はデングウイルスによる感染症で、発症すると40度近い高熱や激しい頭痛、筋肉痛などの症状が表れる。8割程度は無症状とされるが、ごくまれに「デング出血熱」を発症し、死に至ることもある。

 WHOやWHOのアメリカ地域事務局によると、5日までに少なくとも80カ国から1044万人の症例が報告され、死者は6000人を超えた。特にアメリカ大陸からの報告が激増しており、報告症例の97%を占める。

 デング熱を媒介するのはネッタイシマカや日本にも生息するヒトスジシマカだ。デング熱の流行の背景には、地球温暖化の影響による蚊の生息域の拡大や生息数の増加、感染者や蚊の地球規模の移動がある。

 日本では14年と19年に国内感染が確認された。国立感染症研究所によると、20年以降は海外で感染した人が国内で発症する「輸入症例」のみだが、今年は6月30日までに96人の症例が報告され、23年同時期の2・8倍となっている。

 デング熱は特効薬がないため、予防が大切だ。厚生労働省は海外へ渡航する人に対し、肌を露出するときは虫よけ剤を塗ったり、蚊がいる環境では就寝時に蚊帳を使ったりなど、蚊に刺されないための対策を呼びかけている。【金秀蓮】

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