三菱UFJ銀行の男性行員が、顧客企業の株式公開買い付け(TOB)に関する情報を、公表前に親族に漏らした疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が行員宅や同行本社などを金融商品取引法違反容疑で強制調査したことが9日、関係者への取材で判明した。親族は漏えい情報に基づく株取引で数百万円の利益を得た可能性があるという。
金商法は、業務で上場企業の未公表の重要事実を知った会社関係者が、他人に利益を得させたり、損失を避けさせたりする目的で情報を伝えることを禁じている。情報を伝えられた側が実際に取引をすると、伝えた者は罰せられる。
関係者によると、男性行員は2023年までに、顧客企業の公表前のTOB情報について、複数回にわたって親族に漏らしていた疑いが持たれている。親族は顧客企業の株を購入し、TOB公表後に株価は上昇していた。
監視委は今年5月、行員の自宅や三菱UFJ銀行、行員が過去に出向していた三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを調査し、裏付けを進めている。三菱UFJ銀行の広報担当者は毎日新聞の取材に「疑いが事実であれば誠に遺憾。引き続き調査に全面的に協力していく」とコメント。男性行員は、同行に対し「(他意なく)漏らしたかもしれない」と説明する一方、利益を得させる意図については否定したという。
三菱UFJ銀行を巡っては6月、顧客企業の非公開情報を系列の証券会社2社と無断で共有していたことが、金商法が定める「ファイアウオール規制」違反に当たるとして、金融庁に業務改善命令を受けている。【渡辺暢】
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