山開き前の富士山で3人が死亡した遭難事故。閉山中の富士登山の危険性について静岡県の担当課に聞きました。

開山直前は危険度増す

閉山中の富士登山について、県富士山世界遺産課の大石正幸 課長は天候の急激な変化に加え、特に開山直前のこの時期は足場の悪さが危険度を増していると話します。

県富士山世界遺産課・大石正幸 課長:
この時期だとまだ雪が残っていたり雪面が凍結していて、気象条件として非常に危険な状況。雪崩や雪解けもある時期なので、石が安定せずちょっと浮いていて落石も発生しやすいなどの環境的な危険もある

また、開山前は山小屋や救護所が開いておらず、助けを求める環境も整っていません。

県富士山世界遺産課・大石正幸 課長:
上の方で何かあったときに、助けを求めたりというのを受け入れる体制がないので、やっぱり夏山期間以外は本当に危険が大きいという風に何とかご理解いただきたい

ハードル高い入山規制

一方、県道である登山道以外で入山規制をするハードルは高く、開山を待って登山するよう求めていくしかないとしています。

県富士山世界遺産課・大石正幸 課長:
山なので登山道以外からでも入れると考えた時に、そこを規制するというと法令上の制度が今のところはない。制度的なところは富士山なので、国とも相談しないと何ともいえないところもあるので、まずは注意喚起からと考えている

閉山中も登山者が

閉山中の遭難事故は相次いでいるものの登山者がいなくなることはありません。

6月26日 山頂まで行ったという登山者は…

26日に登頂した登山者:
事前の情報収集とか現場で無理をしないで、きょう(26日)も「途中で風強かったら戻ろうね」っていう形でスタートしてますので、準備万端にして登山している方でもそういう事故ってのは、登山者ではあるので気をつけなきゃなっていう風に思いました

県は山梨県などと安全な富士登山のためのガイドラインを定めていて、十分な登山経験や知識がない人は閉山中に登山をしないよう強く求めています。

改めて富士登山についてみていきましょう。

富士山には、静岡県側に3つ、山梨県側に1つのあわせて4つの登山口があります。

夏山シーズンで開山している期間は静岡側と山梨側で異なっていて、静岡側は7月10日から、そして山梨側は7月1日からです。

続いてこちらは富士山で起きた遭難事故の発生状況です。

開山している期間には63件で70人が遭難。

閉山期には12件で15人が遭難しています。

遭難の人数については閉山中の登山者数はデータがなく比較できませんが、山岳遭難で死亡した人の割合では夏山シーズンは約3%に対し、閉山期間は20%と大きく差があり、閉山期間での遭難が重大な事故につながる可能性が高いことがわかります。

天候の急変に雪崩や落石など危険な環境

では、なぜ危険なのか静岡県の担当者は開山期以外の登山が危険な理由について主に天候・環境の2つを挙げています。

富士山は標高が高いため気温差が大きく、特に夏以外の期間は気温が急激に下がったり風が激しく吹いたりするそうです。

2023年7月に県警が富士宮口5合目で撮影した画像は天気がすごく良いようにみえますが、その2時間後の富士宮口8合目から9合目では青空は一切見えず天気が急変しています。

また、閉山期間は雪崩や凍結の時期でもあり、落石も発生しやすいということです。

さらに山小屋や救護所、トイレなどが閉鎖されているほか、携帯電話も通じにくく万が一の時に安全確保が難しい状況です。

一方で県が管理している登山道を閉鎖することはできますが、登山道以外からも富士山に登ることは可能で、入山自体を規制する法令がないというのが現状だといいます。

ただ、県としては閉山期間は登山はしないよう呼びかけています。

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