横断幕を手にする(左から)山北育実自然保護官と米沢則寿帯広市長、関係自治体の首長ら=北海道帯広市で2024年6月25日午前10時4分、鈴木斉撮影
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 日高山脈襟裳十勝国立公園が正式に指定された25日、地元の十勝と日高地方は地域活性化につながるという期待感に包まれた。各地で誕生を祝うセレモニーがあり、「長年の悲願がかなった」という歓喜の声が上がった。北海道内の国立公園の指定は1987年の釧路湿原国立公園以来。【鈴木斉、平山公崇】

 面積は「日高山脈襟裳国定公園」から2倍以上に拡大。海域は約6500ヘクタールになる。シマフクロウやクマタカ、貴重な高山植物の生息で知られる。また、1500~2000メートル級の山々が連なる日高山脈一帯から襟裳岬にかけて手つかずの原生林や氷河に浸食された「カール」と呼ばれる大規模な山岳地形、波で削られた「海食崖」が広がる。

 帯広市役所で25日午前10時から始まったセレモニーは、国立公園エリアに含まれる十勝側の関係6市町村の首長や環境省帯広自然保護官事務所の山北育実・自然保護官らが集合。6市町村と十勝総合振興局が作成した共通デザインの横断幕が披露された。

 横断幕(幅80センチ、長さ7メートル)は日高山脈から流れ出る清流を表す水色の曲線があしらわれている。帯広市の米沢則寿市長は「念願の国立公園誕生だ。地域を挙げて、大切に育みたい」と笑顔で話した。

 中札内村の森田匡彦村長は「住民の古里に対する誇り、希望につなげたい」と力を込め、十勝町村会の竹中貢会長(上士幌町長)は「『十勝の宝物』として十勝全体の地域振興になることを期待したい」とした。

 日高側も喜びに沸いた。日高振興局は25日、エリア内の管内7町の町長がそれぞれのおすすめ観光スポットを紹介するボードを手にした写真を公式ホームページに掲載。各町が指定を祝う懸垂幕を庁舎に掲げた。

 日高町村会の大西正紀会長(えりも町長)は「観光振興や地域活性化・交流人口の増加など大きな期待がされている。ナショナルパーク化で日本人だけでなく、外国人来訪者の増加も期待される。環境省や道と連携し、受け入れ施設や環境に配慮した園地内の整備などを積極的に進めて、雄大な景観や自然を守っていく必要がある」とコメントした。

 また、鈴木直道知事は「地域活性化の起爆剤になると期待する」とのコメントを出した。環境省主催の記念式典は7月20日、新ひだか町で開催される。

 一方、国立公園指定を巡っては、名称に十勝を入れるか否かで意見が割れ、中央環境審議会自然環境部会が異例の多数決で環境省提案の十勝追記を了承した。反対した北海道自然保護連合は5月末、「今回の命名は不合理で妥当性がなく、禍根を残すと危惧する」との声明を発表し、しこりを残す形となった。

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