昨年8月に宜野湾市内の高齢者施設で亡くなった神戸市出身の村田隆志さん(享年70)が8日、沖縄こども未来プロジェクト(代表・武富和彦沖縄タイムス社長)と宜野湾市にそれぞれ1千万円を寄付した。神戸市内で居酒屋を営んでいた経験から、大好きな沖縄で子ども食堂を開くことが夢だったという。村田さんの最期を見守った周囲の人々が「沖縄の子どものために託したい」と話していた村田さんの思いを継いだ。(社会部・垣花きらら)

 村田さんは若い時から幾度となく沖縄を訪れ、「来世では絶対に沖縄県民に生まれ変わる」と語っていたという。70歳を機に沖縄移住を計画していたが、2021年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症。神戸市内で入院したが、沖縄への移住を諦めなかった。

 生活支援や死後の事務などを担う非営利団体「えにしの会」(那覇市)に依頼。宜野湾市のサービス付き高齢者向け住宅「願寿苑(がじまる)」への入所が決まった。23年4月、念願の移住を果たした。

 「願寿苑」施設経営事業主の名嘉廣さんは「オートバイでツーリングを楽しみ、沖縄の景色に癒やされると熱弁していた」と振り返る。しかし、7月に入ると様態は悪化していった。

 継続してサポートしていた「えにしの会」相談員の川嶋成美さんは「沖縄をこよなく愛した村田さんの思いを形にしたい」と考えた。常々「沖縄の子どもたちの食を支えたい」と話していたという。

 村田さんは、やがて自身で文字が書けないほど衰弱。残された時間も少なく、遺言書作成の引受先はなかなか見つからなかった。最後に引き受けてくれたのが古賀尚子弁護士だ。病床で沖縄への思いを熱く語る姿に心を打たれたという。

 8日、那覇市の沖縄タイムス社であった目録贈呈式で、宜野湾市の松川正則市長は「村田さんの思いを受け止め、子どもたちの未来のために大切に使う」と述べた。今後基金を設立し、子どもの食に関する事業に活用する考えを示した。

 こども未来プロジェクトの武富代表は「子どもたちが夢を持って勉学に励めるよう活用していく」と感謝した。村田さんは「願寿苑」にも寄付をしている。

(写図説明)「沖縄の子どのもの食のために私財を活用してほしい」と県内の3団体に多額の寄付をした故村田隆志さん(えにしの会の川嶋成美さん提供)

(写図説明)贈呈式に出席した(右から)古賀尚子弁護士、名嘉廣施設経営事業主、松川正則市長、武富和彦代表、川嶋成美相談員=8日、沖縄タイムス社

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