コイズミチアキ(こいずみ・ちあき)さん
パステル調のポップなイラストは、眺めているだけで楽しい。故郷の静岡県富士市で小学生2人の子育てをしながら、制作に取り組んでいる。地域の魅力をPRするご当地キャラクター「さもにゃん」を考案するなど、現在は市のプロモーションに欠かせない存在になった。「やりたいことができている今はすごく幸せ」と目を輝かせる。【最上和喜】
絵がうまかった叔母の影響で、子どもの頃から絵を描くのが好きだった。「少女漫画よりも少年漫画派」で、お気に入りは週刊少年ジャンプの人気漫画「NARUTO―ナルト―」。「(登場人物の)シカマルが推し。知的でめんどくさがりなところが好きで何度も模写した」と笑う。
漫画家になるのが夢だったが、高校で周囲のレベルの高さに圧倒され、自信をなくした。それでも「描くことを諦めたくはなかった」と振り返る。
高校卒業後は桑沢デザイン研究所(東京)で3年間、デッサンやデザインの技術を磨き、地元に戻って看板制作会社などで働いた。
2012年に結婚し、翌年、28歳で長女を出産。31歳で長男も授かり、しばらくは子育てに奔走する日々が続いた。転機は18年。市が企画した女性による魅力発信チーム「ふじ応援部」の2期生に手をあげて、シティプロモーション課の依頼でさもにゃんを描いた。
富士地域の方言で「大したことはない」を意味する「さもにゃあ」が名前の由来。ベースはネコで、顔のハチワレ模様は宝永山、身を包むこたつの柄は市内の学校給食で出される洋菓子「サイダーかん」をモチーフにした。
ゆるいキャラ設定に、地元愛あふれるかわいいイラストがぴたりとはまった。関係者の評判を呼び、キーホルダーなどのさもにゃんグッズから職員採用試験のチラシまで幅広く手がけるようになった。漫画家を諦めてデザインを学んだ経験は、イラストとデザインの両方を一人でこなせる強みになっていた。
「クライアントファースト」が信条。自分の「色」は抑えつつ、依頼者のイメージや狙いに沿うように自在にタッチを変える。一方、らしさがにじむ作品は個人のインスタグラムなどで見ることができる。色とりどりの花をまとった少女や「あえて昼間を選んで描いた」という近所の工場風景と、そこにたたずむカップル――。やさしい色遣いや透明感のある人物描写が見る人の心をつかむ。
活動の幅は市外にも広がっている。人気ウェブマガジン「ウーマンエキサイト」で育児4コマ漫画を連載するほか、オンラインで画像編集などができる海外発のデザインツール「Canva」の開発会社から請われて、22年に公式クリエーターに就任した。
先日、X(旧ツイッター)を通じて「あなたの作品に触れて富士市に帰りたくなった」というメッセージが届いた。「何よりうれしかった。これからも誰かの心に届くイラストを描いていきたい」
コイズミチアキ(こいずみ・ちあき)さん
1984年、富士市生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後の2006年に帰郷し、会社員を経てフリーのイラストレーターに。ウェブマガジン「ウーマンエキサイト」でコミックエッセー「笑いに変えて乗り切る!(願望)オタク母の育児日記」を連載中。夫と10歳の長女、7歳の長男の4人暮らし。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。