[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1335)

 日本人がかかる主ながんのうち、男性は53・3%、女性では27・8%が予防可能な要因によるとの報告があります。その要因として喫煙や感染症(ウイルスや細菌)、飲酒、食生活の乱れ、肥満などがありますが、喫煙の影響は大きく、男性では1番、女性では2番目に多い要因となりました。この結果から、日常生活におけるがん予防対策として禁煙が非常に重要であることが分かります。

 たばこの煙には70種類以上の発がん物質が含まれていて、これらの物質が体内に取り込まれると、さまざまな酵素活性の活性化や不活化を誘導し、DNA傷害やその修復過程に影響を与え、がんが発症します。

 喫煙者自身の能動喫煙によって、肺がんでは4・8~33・3倍、喉頭がんでは6・0~25・7倍とがん発症リスクが大きく上昇します。直接たばこの煙に触れることのない臓器でもがん発症のリスクが示されています。肺がんでは能動喫煙の他、受動喫煙でもがん発症リスクの増加が報告されています。

 喫煙に関連する肺疾患の代表として肺気腫(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、COPD)があります。COPDでは、たばこの煙に含まれる発がん物質による影響の他に、持続する慢性の気道炎症が発がんに強く関与すると想定されています。

 海外の研究では、COPD患者の肺がん発生頻度は約10~20%で、COPD患者の肺がん合併リスクはCOPD非合併喫煙者より3~4倍高いことが分かっています。COPDの進行に伴って、肺がん合併率が高くなることなども報告されています。

 幸いなことに、日本の喫煙率は男女共に低下しています。1966年の喫煙率は男性83・7%、女性18%でしたが、2016年には男性29・7%、女性9・7%まで減少しています。

 現在は複数の禁煙補助薬が保険で認可され、各施設の禁煙外来で処方されています。喫煙は最も重要ながん発症リスク因子の一つです。今後も禁煙活動を継続していくことが重要と考えています。(古堅誠、琉球大学病院第一内科=西原町)

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