全国トップレベルのゲーマーで先天性血栓性血小板減少性紫斑病という難病と闘い続ける岩屋晃平さん(25)=山口県山陽小野田市=が4月、同県下関市の立修館高等専修学校の非常勤講師に就任した。輸血のため定期的に通院する岩屋さんは、毎週金曜のeスポーツ授業を通じて、困難に負けず、夢に挑戦する大切さを生徒たちに伝えようと意気込んでいる。【柳瀬成一郎】
初の授業は5月10日だった。新設された「選択コース授業eスポーツコース」を希望した生徒7人が参加。7人は同校eスポーツ部の部員でもある。岩屋さんは自己紹介の後、「勝ち負けは僕に任せて。絶対勝てるようにするから」と話し、チーム戦でシューティングを戦う生徒たちの様子を眺め、場面ごとの戦い方を解説した。専門的な指導を受けた生徒は感動の面持ちで、2年の委細(いさい)蓮士さん(16)は「すごい知識があり、めっちゃ楽しい時間でした。どんどんうまくなりそう」と笑顔だった。
岩屋さんは血栓ができ、血小板が減少するという全国でも患者数が少ない難病に向き合いながら、競技者への道を模索してきた。しかし、昨春から対戦相手に負けることが増え、指導者への道を選んだ。一方、同校はeスポーツ部強化に努めている。同部の板垣聡美顧問は2年前、宇部市でのeスポーツ体験会で岩屋さんと出会い、講師役の岩屋さんが目線を低くして対話を心がけながら指導している姿を見た。岩屋さんに全国大会の優勝歴があることも知り、「全国大会に連れて行ってほしい」と非常勤講師に招へいした。
岩屋さんは小中学生の頃にいじめを受け、逃げ道は「ゲーム」だったが、今ではゲームを中心に社会と関わり、ゲームは人生そのものになっている。子供たちには、自らの体験を伝え、人や社会と関わりを持ってほしいと願う。
部活のルールは相手を非難することなく、互いを尊重すること。入学当初は会話を避け、画面だけを見つめてゲームを続けていたが、次第に人の顔を見て話せるようになった。板垣さんは「人との関わりなどで悩んできた生徒が同じ目標を持ち、笑顔になれれば」と願う。
同部は発足5年目だが、まだ全国大会の出場歴がない。今の目標は開催中の全国高校対抗大会「STAGE:0(ステージゼロ)」の地区予選突破だ。岩屋さんは「みんなを全国に連れて行きたい」と前を見つめた。
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