鹿児島県警本部=白川徹撮影

 警察内部の情報を漏えいしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕された鹿児島県警の前生活安全部長、本田尚志(たかし)容疑者(60)=鹿児島市=は10日、弁護士を通じてコメントを発表し「県警がよりよい組織になってもらいたいという気持ちで行動した」と釈明した。「(不祥事の)隠蔽(いんぺい)を指示したのは(野川明輝(あきてる))本部長」と改めて強調した上で「世間を騒がせ、申し訳ない」と謝罪した。

 コメントはA4用紙4枚。部長在任中に入手した内部文書を北海道在住のフリーの記者に送付したと明かした。ただ、この記者とは面識はなく、経歴などから「県警の問題に関心があり、積極的に取材してくれる」と期待したという。

 送付した文書には「問い合わせ先」として前刑事部長の名前や住所を記載したことも明らかにした。「本部長の隠蔽を知っているのは私を含めごく少数。事実を確認すれば書面を送ったのが自分だと分かってしまう」と考えたことが理由だという。「野川本部長に直接進言できなかった。自分の家族や将来のことを考え、実名で公表することもできなかった」とした。前刑事部長は県警を通じて8日に関与を全面的に否定するコメントを出した。本田容疑者も今回のコメントで「前刑事部長を陥れる意図はなかった」と謝罪した。

 送付した文書には、霧島署員によるストーカー容疑事案の被害女性の氏名も含まれていた。この点について、本田容疑者は捜査資料の現物を送って信用させるためだったとしつつ「配慮に欠けていた」と重ねて謝罪した。

 県警を巡る一連の情報漏えい事件では、地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕後、起訴された曽於(そお)署の巡査長(当時)が流出させたとみられるものの中に「刑事企画課だより」と書かれた文書があったことが発覚。「再審などで、廃棄せずに保管した捜査書類が組織的にプラスになることはない」などとして、捜査員らに保管不要な捜査資料の早期廃棄を促す内容だった。

 本田容疑者は今回、自らも同様の内部文書の他、県警がその後に一部の説明を修正した「刑事企画課だより」も同封して送付したと説明した。

 これに対し県警刑事企画課は10日、毎日新聞の取材に「(流出したとされる文書が)本物かは分からない」としつつ、書かれた内容は県警作成のものと「同一」と認めた。その上で「誤解をされかねないという指摘が内部から上がったため、内容を修正した」とした。【取違剛】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。