化学機械メーカー「大川原化工機(おおかわらかこうき)」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件を巡り、社長らが東京都と国に約2億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が5日、東京高裁であり、会社側は「事件は捏造(ねつぞう)された」と改めて訴えた。都と国側は捜査は適法だったとして請求棄却を求めた。
大川原化工機側は控訴審で、警視庁公安部と経済産業省のやりとりが記されたとされる「打ち合わせメモ」を新たな証拠として提出した。会社側は、公安部が経産省の輸出規制省令をねじ曲げて、経産省にも認めさせ、逮捕の根拠としたと訴えている。
省令は、輸出規制要件として「内部の殺菌ができるもの」と定める。当時、公安部は付属のヒーターの熱風で有害な菌が1種類でも死滅すれば、省令が言う殺菌に当たると「独自解釈」して捜査を進めていた。
会社側が控訴審に提出した打ち合わせメモは2017年10月~18年2月の計13回分のやりとりが記載されているとされる。メモによると、経産省の担当者は当初、「省令の規定があいまいで解釈もはっきり決めていない」と述べていた。公安部の独自解釈に否定的だった様子がうかがえる。
18年1月には「これ以上係員レベルで話をしても平行線」と突き放していた。しかし翌月、「公安部長が盛り上がっているというのは耳に入ってきている」「ガサ(家宅捜索)ができるように検討したい」などと態度を変更。公安部は18年10月に同社を捜索した。
公安部は一連の捜査で4人の大学教授らに省令の解釈を尋ね、聴取報告書を作成して経産省に渡していた。しかし、会社側は控訴審で「話していないことが記されている」とする3人の陳述書(1人は1審で提出)を追加提出した。
控訴審で会社側は「不当な働きかけや虚偽の聴取報告書の提出により、経産省の方針を転換させた」と主張。都側は「発言は経産省の担当者の個人的な見解にすぎず、働きかけをした事実もない」と反論した。
口頭弁論後の記者会見で、大川原正明社長(75)は「国と都は捜査を振り返ることが一切無い」と憤った。【遠藤浩二】
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