記者会見する故ロバート・オッペンハイマー博士の孫チャールズさん=日本記者クラブで2024年6月3日午後4時34分、前田梨里子撮影

 米国の原爆開発を率いた「原爆の父」ロバート・オッペンハイマー博士の孫チャールズさん(49)が3日、東京都千代田区の日本記者クラブで記者会見した。「超大国間の緊張で核兵器使用の脅威が増し、協力しなければ危険な時代に入る」として「今こそ祖父、被爆者を含め、過去の人々の助言に学ぶことが多くある」と訴えた。

 来日の目的について、チャールズさんは超大国に核軍縮の対話を呼びかけるのに「日本が最適な場所」と説明。1日には広島市を訪れ、被爆者と面会した。祖父も1960年に来日したが日本側関係者からのアドバイスで被爆地には行かなかったとのエピソードを明かし、「自分は静かに訪問できて感謝している」と述べた。

 昨年、オッペンハイマー博士の伝記映画「オッペンハイマー」が米国で公開され、アカデミー賞で作品賞など7部門で受賞した。チャールズさんは祖父が軍拡競争を懸念していたことに触れ、「米国内でも水爆に反対した罪人とレッテルを貼られ、国家の敵とされた。しかし私が今回広島で会った被爆者は、(原爆投下を承認した)トルーマン大統領と祖父との価値観の違いを理解してくれていた」と対話の重要性を語った。

 また、現代の危機として気候変動に言及。「核分裂の技術は兵器ではなく、エネルギーに利用すべきだ」と原発の必要性を強調。事故のリスクについては「報道によって原発は危険という意識が強まったが、地球自体を破壊しそうな気候変動を考えるとバランスを取るしかない」と訴えた。

 チャールズさんは会社経営などを経て2019年に「オッペンハイマー・プロジェクト」を創設、核拡散と気候変動の脅威に核分裂技術が果たす役割などを訴える活動を続けている。【國枝すみれ、武市智菜実】

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