イスラエルのガザ地区侵攻を巡る歴史的経緯について語る早稲田大文学学術院の岡真理教授=高知市で2024年5月25日午後6時26分、小林理撮影

 2023年10月から続くイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への侵攻をテーマに、早稲田大文学学術院の岡真理教授(アラブ文学)が5月25日、高知市で講演した。岡氏は、イスラエルの攻撃で女性や子どもを含む多くの犠牲者が出ていることに触れ、「紛争は『どっちもどっち』ではなく、イスラエルの(パレスチナ)占領と封鎖という暴力がもたらしたとの歴史的経緯を知る必要がある」と訴えた。

 高知県内の有志や市民団体が主催し、約120人が参加した。岡氏は1948年のパレスチナにおけるユダヤ人国家「イスラエル」の建国宣言以降、パレスチナ人が故郷の土地から強制的に排除された結果、パレスチナ人の7割が難民やその子孫になったと説明。シオニズム(ユダヤ民族国家建設運動)に批判的なイスラエルの歴史家、イラン・パペ氏の「(パレスチナに)ユダヤ国家を作ろうとする限り、民族浄化は本質的、不可避的に内包されていた」との主張を紹介した。また、今回のイスラエルによるガザ地区攻撃は「民族浄化の総仕上げだ」と指摘した。

 さらに、イスラエルが大学や宗教、文化施設を破壊し、知識人を殺害していると批判したうえで「文化的ジェノサイド(集団殺害)であり、パレスチナ人がこの土地で生きてきた記録、記憶の痕跡を物理的に抹消しようとしている」と述べた。

 岡氏によると、パレスチナ人たちは「ガザには『ハヤート』がない」とよく口にするという。ハヤートはアラビア語で「生活」や「生きること」という意味だ。高知市の面積が309平方キロメートルなのに対し、ガザ地区は365平方キロメートル。幼少期に1年半、高知市に住んでいた岡氏は「ガザ地区よりやや狭い高知市が17年間も封鎖され、自由を奪われ続けた230万人もの人々が日々攻撃にさらされている状況を想像してほしい」と呼び掛けた。【小林理】

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