聞き取った内容がぎっしり書き込まれた住宅地図=長崎県平戸市岩の上町の平戸図書館で2024年5月8日午後7時7分、綿貫洋撮影

 長崎県平戸市の平戸まちづくり運営協議会が、平戸の地名の由縁や背景を紹介する冊子「ところの呼び名さがし―平戸の地名再発見」を発行した。郷土史を研究する薬剤師の近藤司さん(42)=同市職人町=の地道な聞き取り調査に基づく冊子で、後世に残る貴重な史料となりそうだ。

 協議会が毎月発行する「平戸まち協だより」(2022年11月~24年2月)に、近藤さんが市立平戸小校区内の町名にまつわる解説を寄稿。この連載を加筆修正した冊子(A4判)を300部作成、市内の小中学校や公民館などに配布した。

 近藤さんは高校生時に郷土誌を自費出版するほどの歴史好き。薬剤師になってからも休日は市内を巡り、地元のお年寄りから地名の通称「ところの呼び名」の聞き取りを重ねた。

冊子「ところの呼び名さがし」を執筆した近藤司さん=長崎県平戸市岩の上町の平戸図書館で2024年5月8日午後7時16分、綿貫洋撮影

 小さな地名は近いところで10メートル間隔で存在するため、普通のノートに書き記しても位置関係が全く分からない。そのため聞き取った内容は、重たい住宅地図に直接書き込んだ。これまでに調べた地名は平戸島、生月島南部、度島(たくしま)で約8000に及び、住宅地図は全ページがメモで埋まっている。

 冊子は「岩の上町」「鏡川町」など全16町で構成。例えば「職人町」はもともと大工町、桶屋町、鍛冶屋町、細工町という町名由縁の職人が居住していた。この地域の総称として江戸期から「職人町」と呼ばれるようになった。さらに旧大工町から南へ一直線に伸びる「新道」は、藩主葬送の際にショートカットするため新たに造られた道が名前の由来という。

 ところの呼び名は暮らしと密接に関わった痕跡で、地名を集めれば土地の性質、地域の全体像が見えてくるという近藤さん。「呼び名はそれぞれ意味があって個性がある。呼び名を大事にして親しみを持って使ってほしい」と語る。【綿貫洋】

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