国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=同研究所提供

 新型コロナウイルス感染と後遺症について、感染時に症状が重かった人ほど後遺症を発症する割合も高いという調査結果を、独協医科大(壬生町)などの研究チームが発表した。国内の調査では最大規模といい、同大学は「感染症法の5類移行で一段落したという見方もある中、後遺症は残された大きな課題となる」としている。

 独協医科大医学部精神神経医学講座の古郡規雄主任教授、菅原典夫准教授らと大阪国際がんセンターが、多数の人に特定の働きかけをせず長期間追跡して病気の発症要因や予防因子を推定するコホート調査をインターネットで実施。元々あまり身体症状がない2万7030人を対象に2022年2月~23年1月、発生した症状を尋ねた。

 調査では、対象者全体の19・9%が調査期間中に新型コロナに初めて感染したと回答。このうち9・4%が高濃度酸素吸入などの酸素療法を受けていた。

 新型コロナの後遺症は、発症から3カ月以内に表れて2カ月以上続くとされ、疲労感、息切れ、記憶障害など多様な症状が報告される。疲労感などの体調不良はコロナ感染と無関係に表れることもあり、研究チームは、胃腸の不調▽関節痛▽頭痛▽息切れ▽めまい▽疲労感▽睡眠障害▽味覚障害▽集中力低下▽脱毛――など18項目の身体症状を対象者全員に尋ね、①新型コロナに感染して酸素療法を受けた人②感染したが酸素療法は要しなかった人③感染しなかった人――の回答を比較。「胸の痛みや息切れ」があるという回答は①35・2%②3・2%③3・1%、「胃腸の不調」は①28・5%②7・4%③5・5%――など、18項目全てで、感染し酸素療法を受けた人が症状を有する割合が高かった。

 8項目の身体症状を総合して「とても高い身体症状負荷がある」と判定された対象者の割合は①46・7%②6・1%③6・1%。研究チームの菅原准教授は「新型コロナに感染後、酸素療法を必要としない程度の症状で回復した人に後から身体症状が出る可能性は、感染しなかった人と比べて変わらない」とする一方、「酸素療法を要するほど症状が重かった人の多くに後遺症が出ていることが分かった。発症時に症状が重かった人は回復した後も注意深く健康観察することが望まれる」としている。

 研究成果は5月10日付の英国の国際医学誌「BMJOpen」に掲載された。【藤田祐子】

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