障害者支援施設の行政処分について説明する茨城県障害福祉課の森田教司課長(右)ら=茨城県庁で2024年5月17日午後1時1分、寺田剛撮影

 茨城県東海村の障害者支援施設「第二幸の実園」で職員が入所者に暴力などの虐待を繰り返す法令違反があったとして、県は17日、園側に事業停止に相当する3カ月間の「指定効力の全部停止」の行政処分を通知した。障害者総合支援法に基づく指定取り消しに次いで重い処分で、長期の障害者入所施設への全部効力停止処分は異例。

 園が運営の原資となる給付金を受け取れなくなるため、重度の障害者ら入所者49人の転所が必要になる可能性がある。

 園は東海村の社会福祉法人「愛信会」(村上忠夫理事長)が運営し、2008年に県から障害者支援施設の指定を受けた。

茨城県が3カ月の指定停止の行政処分を通知した障害者支援施設「第二幸の実園」=茨城県東海村で2024年5月9日午後1時16分、寺田剛撮影

 県の発表によると、園では職員が21年までの数年間、入所者に複数回暴力を振るった。また入所者9人の預かり金計約250万円を職員が詐取したほか、入所者全員から「日用品代」と称して現金を毎月1000円ずつ徴収したり、職員の外食代を計5万円以上負担させたりする経済的虐待もあったとしている。

 県は、併設するグループホームでも虐待があったとして同様の指定停止処分を通知した。入所者に不利益が生じないよう処分開始はいずれも3カ月猶予し、8月18日とした。

 17日に記者会見した県障害福祉課の森田教司課長は「継続性や組織的な関与から悪質と判断した」と説明。入所者の受け入れ先については「他の民間施設を前提に調整していく。県の施設も候補の一つ」とし、転所しない場合でも入所者に金銭的な負担をさせないよう園に求めた。

 愛信会は23年、県を相手取り処分の差し止めを求める訴訟を水戸地裁で起こした。訴訟で県側は、暴力に関与した職員の中に施設長も含まれると主張。同会は施設長の暴行や金銭負担の強制を否定し、着服や暴行をしていた職員は退職したとして「組織的な関与はない」と反論している。

 愛信会の代理人弁護士は17日、処分について「原因となる事実関係が異なり、大いに問題がある。早急に今後の方針を検討する」とのコメントを発表。施設の今後については「指定取り消しではなく運営に問題はない。すべての事業所の通常運営を継続する」としている。【寺田剛、川島一輝】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。