衆院東京15区補欠選挙が16日に告示され、28日に投開票される。東京都知事選や衆院選の前哨戦として注目を集める東京15区は、2代続けて自民現職が東京地検特捜部に起訴された。「政治とカネ」の問題に揺れる異常事態の中、複数の新人や訴追された元職らも出馬を表明し、混戦の様相を呈している。

仕切り直し

東京15区では、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で収賄などの罪に問われ1、2審で実刑判決を受けた元職の秋元司被告(52)=上告中=に続き、前職の柿沢未途氏(53)も選挙区域の江東区長選を巡る買収事件で立件され、有罪が確定。同氏の事件に絡み、前区長の木村弥生被告(58)も在宅起訴されている。

柿沢氏の辞職に伴う今回の選挙戦には、著名人や地元での政治経験のある人物が次々と名乗りを上げている。主な立候補予定者は、酒井菜摘氏(37)=立憲民主▽金沢結衣氏(33)=日本維新の会▽吉川里奈氏(36)=参政党▽飯山陽氏(48)=諸派▽根本良輔氏(29)=同▽乙武洋匡氏(48)=無所属▽秋元氏=同▽須藤元気氏(46)=同=の8人だ。

それぞれの思惑

このうち乙武氏は、小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が設立した「ファーストの会」が後ろ盾となる。自民・公明の推薦を視野に入れていたが、地元の自民関係者の反発や過去の女性問題への懸念から、両党とも距離を置く。

3選出馬が有力視される7月の都知事選に向け、政権与党との関係を重視している小池氏だが、前哨戦となる補選では枠組みをまとめきれなかった形。それでも都民ファ関係者は「知事は補選でかなり応援に入る予定だ」と、〝小池色〟の強い選挙戦となる。

13日に江東区内で行われた乙武氏の街頭演説には小池氏が駆けつけ「本人は『五体不満足』だが、国民には満足のできる存在だ」と著作をもじって持ち上げた。また、推薦を決めた国民民主の玉木雄一郎代表も登場した。

酒井氏は、直前に候補者を取り下げた共産の支援を受けるほか、社民が12日に支援を発表した。都内の首長選などで連携を続ける立民と共産は、夏の都知事選でも野党統一候補擁立を模索。都内の選挙区によっては衆院選での連携も視野に入れており、今回の補選は試金石となる。陣営関係者は「政治とカネにまみれた体質を変える」と意気込む。

都知事選で前回に続き独自候補擁立を目指す維新は、衆院選も見据えながら前回選挙で苦杯をなめた金沢氏の躍進を期す。ほかにも無罪主張を続け復活を目指す秋元氏、今回は無所属ながら格闘家時代からの知名度を誇る須藤氏と、実績のある候補が出馬する。

政治不信払拭を

昨秋の仕切り直しの区長選で投票率が低迷するなど、地元では問題が続いたことによる有権者の政治離れが懸念される。

ただ、一部国政政党が行ったとされる情勢調査結果がインターネットに流れるなど、すでに情報戦は始まっている。各陣営の思惑が交錯する中、政治不信を払拭する選挙戦が求められている。(大泉晋之助)

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