控訴審判決で辺野古住民側の原告適格が認められたが、「楽観はできないし、まだ勝利ではない」と表情を崩さなかった原告の金城武政さん=那覇市で2024年5月15日午後3時35分、喜屋武真之介撮影

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、県による埋め立て承認の撤回処分を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして、辺野古やその周辺の住民計4人が裁決の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は15日、訴えを却下した1審・那覇地裁判決を取り消し、審理を差し戻した。

 1審は原告適格を認めずに「入り口論」で退けたが、高裁は「騒音などの被害を受ける恐れがある」として原告適格を認めた。国側が上告せず、地裁で差し戻し審が始まれば、国交相の裁決が違法かどうかについて審理されるとみられる。

 原告らは飛行場の移設による航空機の騒音や振動で身体や生活環境に著しい被害を受ける恐れがあるとしたうえで、行政不服審査法に基づく防衛省の審査請求を同じ内閣の国交相が裁決したのは違法だと主張した。

 2022年4月の1審判決は、原告らの居住地域が騒音被害の補償基準になっているW値(うるささ指数)75以上の範囲から離れていることから、「著しい被害を直接的に受ける恐れがあるとは認められない」として、原告適格を認めなかった。

 一方、福岡高裁那覇支部は、埋め立て承認申請の審査対象となる環境影響評価に、環境省の航空機騒音基準(W値70)が採用されていることを重視。辺野古に暮らし、W値70以上の範囲に近接している住民3人に原告適格を認めた。また、辺野古周辺に住む1人についても、自宅のある建物の高さが、米国が設定している米軍飛行場周辺の高さ制限とほぼ同等で「生命や身体の安全にかかる被害を受ける恐れがある」と原告適格を認めた。

 県は13年に公有水面埋立法に基づき、埋め立てを承認したが、海域で軟弱地盤が見つかったことなどを理由に18年8月、承認を撤回した。国交相は防衛省から審査請求を受け、19年4月に撤回処分を取り消す裁決をした。【比嘉洋】

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