岡山県の企業と共同開発した災害用シート。シートがはがれないように押さえる木材は作業員の足場にもなり、安全性に配慮している=全国災害復旧職人派遣協会提供

 能登半島地震で被害を受けた民家の屋根にシートを掛けて補修するため、山梨県大月市に本部を置く一般社団法人「全国災害復旧職人派遣協会」が2~3月、全国の屋根職人らからなる「ブルーシート掛け隊」を石川県能登町に派遣した。協会は同市の屋根施工会社が7年前に設立。職人のネットワークを全国に広げ、被災地へ派遣する仕組みづくりを進めている。

 2月7日、隊は山梨県が備蓄するシート200枚などをトラックに詰め込み、能登町へ向かった。派遣は山梨県の依頼。3月末までの計20日間、宮城▽東京▽広島▽福岡▽宮崎――の5都県などから職人83人が、屋根が損壊したり、瓦が落ちたりした民家計47棟の屋根にシートを掛けた。

 協会がこれまで培ったノウハウを生かし、岡山県の企業と共同開発した「災害用シート」も活躍した。屋根に掛けたシートの上から細い木材を組んで押さえる仕掛けで、シートがはがれるのを防げて、木材が作業員の足場にもなる。従来のブルーシートに比べてコストは掛かるが耐久性と安全性に優れ、被災者や職人の評判も良かったという。

一般社団法人「全国災害復旧職人派遣協会」の石岡博実代表=大月市内で2024年4月5日午前11時26分、野田樹撮影

 協会を立ち上げた屋根施工会社「日本ステンレス工業」(大月市)の会長、石岡博実代表(70)は「各地から集まって組織的な活動ができたのは大きな意義があった」と振り返った。

 同社は1995年の阪神大震災で初めて屋根にシートを掛けるボランティアを実施。新潟県中越地震や東日本大震災、熊本地震でも活動したが、災害は頻発し、仕事を抱えながら1社だけで対応するのが難しくなった。

 危険が伴う高所作業ができる職人は一人親方が多く、被災地に派遣できるような組織がなかった。災害時は屋根の修理をうたう悪徳業者が現れるため、現地で信用を得る必要もあった。そこで石岡代表が中心になって17年、協会を発足。自治体を巻き込んだ職人派遣の仕組みづくりを始めた。

 19年、山梨県と初めて協定を締結し、県の要請を受けて県内外の災害に職人を派遣できるようになった。協定には、現地への交通費や宿泊費を県が負担することも盛り込み、活動しやすくなったという。支部は8都県に広がり、大工や鉄筋工など高所作業に慣れた職人約130人が登録している。

 石岡代表は「屋根の雨漏りは家に大きなダメージを与える。いち早く雨漏りを止めるために、全国の専門職を被災地に派遣できる組織にしたい」と目標を語った。【野田樹】

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